虚空の道標
□第4話
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「気をつけて」
「あぁ、ありがとう」
輝く朝日は、何事もなかったかのように今日も昇る。
体調が完治した夕桐は、朝早くに哀音の家を後にした。
遠くなっていく背中を、哀音はしばらく見つめていたが、
「…っ」
振り払うように長い髪を揺らして、家の中に入った。
なんだか急に家が広くなった気分だ。
もう、ここで帰る人を待つことはない。
哀音ひとりの家になった。
「………」
薄暗く感じる部屋。
佇むテーブルの上に、光を反射している何かがあった。
夕桐からもらったペンダントだ。
透き通る透明な石のついた、シンプルなペンダント。
そっとすくい上げて、哀音はそれを握りしめた。