†Only My Kiss†

□Oath.00
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重たい玄関のドアを開けて、まぶしい景色に目を細める。
学校へ向かう朝は、いつも少し気だるい。
朝日は痛いくらいに照りつける。

…そろそろ疲れてきた。

柘辻芽実(つつじめぐみ)、16歳。
高校に入って以来、友達は一人もいない。
むしろ、今までの人生の中で一人もいないと言っても過言ではない。
はっきり言って、友達なんか必要ない。
一人の方が絶対楽。
迷惑をかけられることもなければ、気を遣う必要もない。
そう思って、ずっと一人で生きてきた。


みんなには自然と避けられるようになった。
どうやら学校一の不良扱いされているらしい。
もちろん不良ではない。授業だって真面目に出ている。
が、要因はこの染め抜いた赤茶色の髪。
そして、生まれつきの人相の悪さ。
髪の毛を染めたのは、そういう気分だったから。ただそれだけだ。
だが、タイミングが悪かったらしい。
それは、入学式直前だった。
そのまま登校したら、案の定である。
生徒には恐れられ、教師には目をつけられ。
不良まっしぐらだった。
そして今に至るわけだが…。

現状、教室の席は窓際の最後列。
この席は5月にあった最初の席替えの時から、現在、10月まで変わっていない。
しかも、この席の前と右は使用されていない机。
あたしの周りの席は人気がないどころか誰も座らないようになっていた。
…これは一種のいじめであろう。
そう感じたが、座ってみると意外と楽な席だった。
授業中は当てられないし、他人の視界にも入りにくい。
特等席だ、と思うことにした。


そんな芽実の前の席。
夏休み明けに来た転校生のおかげで、今はきちんと使用されていた。
巴奏士(ともえそうし)という男子生徒。
やたらと色素の薄い奴で、見た目は男女の判断がつかないくらい女々しい。
そんな容姿の割には、芽実と目があっても特にびびりはしなかった。
周りから同情されても、別段嫌がることもなく芽実の前の席に座っている。
いつもぼーっとしていてあまり動かず、無口。
時折、置物かと思ってしまう。

…そんなイレギュラーも、すぐに慣れて、飽きてしまった。
冬へと向かう秋、紅葉する木々。
落ち葉を散らして、肌寒い風が頬をなでる季節。
生きることの意味を持たずに、求めずに過ごす毎日が続いていく。

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