*Short Story*
□二番目の停車駅
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「じゃあね、翼君」
卒業式の後、俺たちは別れを告げた。
最後まで強がっていたあいつの頬に、涙が伝う。
…これが本当の別れだ。
もう、会うことはないだろう。
別々の道へ、歩き出すのだから。
「あぁ、希美」
あいつが手を振るから、俺も振った。
今まで楽しかった、ありがとう。
心の中で、言えなかった言葉を唱える。
悔しいくらい、何も言えなかった。
―――
ひらひらと、薄紅が舞い散る。
視界を横切る度、周りの景色を変えていく。
「翼、なに立ち止まってんだよ」
肩を叩かれて、俺は振り向いた。
そこにいたのは、中学からの同級生、鶴橋 朝真(つるはし あさま)。
同じ高校に進学したのは、俺と朝真だけだ。
みんな、ばらばらになった。
「うぉ!同じクラスじゃん!!」
「痛ってぇ、放せ」
特に興味の対象とならないクラス発表。
どうやら朝真とは同じクラスだったようだ。
「可愛い子いるかなー」
「知らね」
うんざり思いつつも、掲示板に目を向けてみる。
『1-B 17 洲桜 翼(すおう つばさ)』
俺の出席番号は、17番だった。
どうせ知ってる名前なんてないから、他の名前は見なかった。
今の俺は、きっとどうかしてる。
過去の思い出に捕らわれて、あいつだけに縛られて。
今は超名門女子校で、同じように入学式に出ているだろう。
天津 希美(あまづ のぞみ)。
…俺の、彼女だった女。