*Short Story*

□贖罪
1ページ/4ページ



──── 願うなら、償いを




     叶うなら、この罪を ────












──あいつのことが、好きだった。



あれは、小学校の遠足の日。


もう遠い昔、褪せた記憶。



だけど、それはこうして時々蘇り…



…俺を、赦しはしない。










『あー!おまえまた"あいつ"のこと見てる!!』

『好きなんだーー!!』



『ちっ…ちがう!!』



陰る山道を、俺たちは列を成して歩いていた。



『告白しろよ!』

『おれが言ってきてやるよ!おーい』


俺をからかいながら、子供たちは駆けてゆく。


『やめっ…』

『こいつ、おまえのこと好きだってよー!!』


俺の言葉なんて耳に入っちゃいない。


『やめろって!!』


俺は目の前で笑う奴らをひとり突き飛ばした。


崖から落ちたりしないよう、ちゃんと小学生なりに気を使った。



──だけど。




『わっ!!』


俺が突き飛ばしたそいつの体が、すぐ近くにいたあいつにぶつかる。



『あっ……』



あいつの弱そうで小さな体は、数歩よろめいて…



……崖の下へと、姿を消した。









──次の日、あいつは大怪我で入院したと告げられる。



………見舞いには、行かなかった。







 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ