*Short Story*
□贖罪
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──── 願うなら、償いを
叶うなら、この罪を ────
──あいつのことが、好きだった。
あれは、小学校の遠足の日。
もう遠い昔、褪せた記憶。
だけど、それはこうして時々蘇り…
…俺を、赦しはしない。
『あー!おまえまた"あいつ"のこと見てる!!』
『好きなんだーー!!』
『ちっ…ちがう!!』
陰る山道を、俺たちは列を成して歩いていた。
『告白しろよ!』
『おれが言ってきてやるよ!おーい』
俺をからかいながら、子供たちは駆けてゆく。
『やめっ…』
『こいつ、おまえのこと好きだってよー!!』
俺の言葉なんて耳に入っちゃいない。
『やめろって!!』
俺は目の前で笑う奴らをひとり突き飛ばした。
崖から落ちたりしないよう、ちゃんと小学生なりに気を使った。
──だけど。
『わっ!!』
俺が突き飛ばしたそいつの体が、すぐ近くにいたあいつにぶつかる。
『あっ……』
あいつの弱そうで小さな体は、数歩よろめいて…
……崖の下へと、姿を消した。
──次の日、あいつは大怪我で入院したと告げられる。
………見舞いには、行かなかった。