*Short Story*

□幽玄の華
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──散りそめし


うす紅の


香の名残り───







慶応元年、四月の京都。


穏やかな街を、ひらひらと舞う花弁。

人を惹きつけ、目を奪う薄紅。


春の香りに、華やぐ世界。




無数の樹からこぼれる一片は、巡り巡って。

踊るように、舞い込んでくる。



開けた襖をくぐり、風と共に───。




眠る青年の頬に降りた。



 
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