Tactics~また逢おう,君が覚えていなくても~

□第四章
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そして、煌と天那は透留の家に帰ってきた。



裏口から飛び出したせいで見えなかったが、彼の家は茶店をしている。

『霞杏(かすみあん)』という、ちょっとした食事も取り扱う店。

おすすめ商品は桜餅らしい。

近所では人気がある、と煌が教えてくれた。



「おかえりー!!!」


表の店から入ると、接客中の透留が目を輝かせた。


「無事に帰ってきてくれてよかったよ」
「……」


天那はぽかんと放心する。

どうしてこの人は、こんなに心配してくれていたのだろう。


「安心しなよって、言っただろ?」
「…!!」


はっとして透留を見つめた。

包み込むような笑顔が、目の前にある。


「君、行く当てなさそうだったし、ここにいていいよ」
「透留さん……」


…駄目だ、やっぱり感動で涙出てきそう。


「……」


何となく、天那は煌のほうを見た。


そして、大きく目を見開く。


「!!」


煌が、微笑んでいた。

透留と天那を見て、彼は優しそうに笑っている。


「っ!」


が、天那の目線に気付き、すぐ仏頂面になった。


「……」



──あんな風に、笑えるんだ。



少しずつ、煌への印象が変わっていく。

なんでだろう、怖い人のはずなのに。

心を、許してしまいそうだ…。


 
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