Tactics~また逢おう,君が覚えていなくても~
□第六章
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「…はぁ」
穏やかな午後。
透留に頼まれて、天那は買出しに出ていた。
変わらなく賑やかな街並み。
裏腹に、天那の頭の中は穏やかじゃなかった。
透留の言葉が、離れない。
『…天那ちゃんならきっと、煌を救ってくれる』
でも、どうやって?
煌を救うという役目は、分かっているつもりだ。
果たせば、未来に帰れるだろうことも薄々。
なのに、方法が分からない。
「救うって…なに……」
無意識に呟きながら歩いていたとき───
───ぽすっ。
「あっ……」
前を見ていなかった天那な、誰かに軽くぶつかった。
「すいませんっ」
下を向いたまま顔を上げず、天那は頭を下げる。
「いいえ」
上から、若い少年の声が聞こえてきた。
聞き覚えのある落ち着いた声に、天那は顔を上げた。
「…怜祥!」
そこには、今一番会いたくない人物がいた。
先日、煌と天那を見逃してくれた怜祥。
あの後もずっと上総が煌を追いかけている噂は聞いている。
今度はもう、見逃してくれないかもしれない。
「こんにちは、天那さん」
怜祥はいつも通りの笑顔。
けれど、天那は警戒心を解かなかった。
「……」
怜祥を睨むようにしている天那を見て、怜祥は軽く息を吐く。
「僕は、天那さんを傷つけたくないんです」
微笑んだまま、儚げに首を少し傾げた。
「天那さんが、好きだから──」
彼の周りを流れる風も、包まれるような寒さすらも。
全てが、怜祥を一層綺麗に見せる。
天那は目を大きく開いたまま、流れる時間に取り残されていた。
そして、薄っすら口を開く。
「れい───」
「───調子乗ってんじゃねぇぞ!!!」
「!?」
天那の声に被さって、真後ろから怒声が飛んできた。
「なっ…なに!?」
振り返ると、大通りの真ん中で少女と若い浪士が数人対峙していた。
少女一人に、男がざっと5人。
「助けなきゃっ…」
天那は一目散に少女へ向かって駆け出す。
「っ…天那さんっ」
怜祥はしばらく天那を見送り、その先の浪士たちに目線を移した。
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