思いの欠片

□枷と呼ばれる少女の行方
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微暴力表現ありです。
ルウの血が騒いで〜みたいな。



「ルウ・・・・ッ」
壁に叩きつけられてユティが呻いた。
返事はない。
ああもう私の声さえ届かないのか。
闇としての性とルウとしての心と。
相反するそれが暴れ狂うときは、ルウは一人になろうとするけれど。
枷である私が主を一人にするな出来るわけがなく、する気もない。
「く・・・・っ」
喉を締められて息ができない。
朦朧とする意識の中でここで死ぬのかとぼんやりと思った。
別にそれでも構わないというのはやせ我慢でなんでもなくて(だってこれが私の存在理由)
けれど。
たったひとつ、この綺麗な青の瞳が涙にぬれることだけがなければいい。
そんなことはありえないだろうけれど。
馬鹿みたいに優しいのだ、この天使は。
最後の力で伸ばした腕がルウ、いや闇の頬に触れた。
「ル、ウ・・・・」
掠れた声で呟かれた言葉に、次の瞬間青の瞳が見開かれた。
――どうか、泣かないで・・・
「ユ、ティ――!!」
げほげほと咳き込むユティに『ルウ』が悲鳴をあげる。
「離れててって、いったのに・・・・!」
彼女から離れようとするルウの腕を掴んでユティが笑った。
「大、丈夫。だか、ら」
「そんなわけ・・・・っ」
「私はあなたのために生まれたもの。ならば、あなたのために死んでいくのが道理」
立ち上がろうとしてよろめく彼女を慌ててルウが抱きとめる。
その体の脆さに思わず息を呑んだ。
自分に比べれば脆弱といっても足りないほどに弱いこの体で。
自分の激情の全てを受け止めていたのだ。
「ごめん、ごめんね・・・・!」
その細い体を抱きしめたままくずおれると、謝らないでと苦笑する声がした。



闇としての血が騒ぐことがある(あった?)とルウとリィがいっていたので。
枷としての宿命を本人は何の気負いもなく享受しているけれど。
その対象である闇は、それに苦しんで。
それでも自分を思ってくれることが嬉しいと。
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