思いの欠片

□枷と呼ばれる少女の行方
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不意に頬に触れた手に悲鳴をあげかけた

「きゃ、んう!?」
その悲鳴も口を塞がれてくぐもる。
「落ち着けってユティ」
声が響くと同時に離れる手。
「・・・・レティー!なにするのよ!?」
「何って・・・悪戯?」
「いい笑顔で言う台詞じゃない!!ヴァンツァーも止めてよ!」
「面倒だ」
「一言でばっさり切り捨てないで!」
「随分驚いてたよな」
「こっちで私が気配読めない相手なんてほとんどいない状態でしかもここ学校だよ。驚くなって方が無理でしょ」
で、と改めて聞く彼女の目は完全に据わっている。
「・・・・二人ともなんでここにいるのかな?ミスター・ファロットたち」
「いやー俺はともかくヴァッツがな」
わざと苗字で呼んだことは完全にスルーされた。もういい、やけだ。
「鬱陶しい」
「あーなるほど。・・・ご愁傷様です」
女の子がくっついてくるのか。
いくら彼が人を寄せ付けにくいといっても視線ばかりはどうしようもない。
まあこの顔だししょうがないのだけれど。
「(納得してる場合じゃなかった!)いや、ここ病人が来るとこだから。保健室の利用法間違ってるから」
「いいじゃんいいじゃん。俺たちの仲だろ?」
「あはははは。そういう問題じゃないって何回言ったらわかってくれるのかな」
「あんな視線の中で勉強しろと?」
「部屋に戻ると・・・・資料持ってくるのが大変か」
うーんと本格的に悩み始めたユティにレティシアが本気で笑い始めた。
「あんたって基本的にお人よしだよな」
「どっかの狼さんほどじゃないけどね。・・・・レティー、ベッド使うなこの馬鹿」
黄金と翠緑玉の君。というかこいつは何故病人用のベットの上で笑っているのか。
「えーいいじゃん、俺今風邪ひいてる訳でもないし」
「こいつにつくような病原菌がいるかどうかさえ怪しいな」
「たしかに!レティー菌とかいたら面白いよね。みんなレティーみたいにな・・・ごめんなんでもない聞かなかったことにして」
「そういう気色悪いことを言うな」
「ごめん自分で言ってて鳥肌たった」
「ひでぇなあ」
「「そういいつつ笑ってる奴が何を言う」」

レティーがユティを名前で呼ぶわけはまたいずれ。
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