まどろみ

□思考回路は停止状態
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ふと、顔を上げた

書簡の整理の最中。
対面に座るのは黄 鳳珠。
戸部尚書の地位にいる男。
様子のおかしい同期兼上司兼友人に眉をひそめる。
「――鳳珠?」
問いかけへの答えは、
「・・・なんだ」
不自然に一拍遅れた。
「いや、別に」
誤魔化して、首を振る。
「そうか」
答えに頷きを返して。
最近この友人はどこか様子がおかしい。
戸部が忙しいのも同じ官吏としてわかるが。
そこまで考えて、頭に浮かんだのは。
(同じ、官吏か・・・)
女である私が男装して朝廷にいるのだ。
ふいに、皮肉化な笑みを浮かべた。
もしも今そのことを彼に打ち明けたら彼はどんな顔をするだろうか。
たぶん、というか十中八九黎深は気付いているだろうけれど。
彼は知らないから。
この、自分の前に座る

――私の密かな想い人は
 
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