連載番外
□ごめんね
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『…ハァ、ハァッ…』
脇目も振らずに、ただひたすら走る。
幸いにも、雨だから道には誰もいない。
『ばか、兄上の、ばか…!!』
家を出て来る時に拭った涙が、また溢れてくる。
それでも走って、私は近くの山のふもとの岩場に身を寄せた。
頭の中は、真っ白。
『……』
岩にもたれかかり、膝を抱いてうずくまる。
『……ばか………』
今いる場所に屋根はなく、降り続く雨が身体中を濡らして、私の体温をどんどん奪っていく。
『……さむ……』
すると次第に視界がぼやけて、私はそこで意識を手放してしまった。