連載番外

□カゼノトオリミチ
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「すごいだろう?」



自慢げに腕を組む父上。


その眼前には大きくて真新しい自転車。


兄上へのプレゼントなんだって。



『すごい!おっきいでござるなぁー!』


「だろう?」


「…わー。本当にありがとうでござる!」


「まぁ、たまにはな。」


「あれ…これは何でござるか?」



その時、プレゼントに対し、珍しくはしゃいでいた兄上が後輪のほうを指さした。


よく見ると、後輪の泥よけの上に何か板みたいなのがついている。



『うーん…?』


「ああ、それは荷台だ。」


「なるほど…ここにも、荷物を置けるんでござるか。」


『ふーん…』



最近の大人用自転車にはこんなのがついてるんだ。



『…便利でござるな…。』



私はちょっとだけ兄上がうらやましく見えた。






「乗ってみても、いいでござるか?」


「ああ、勿論だ。」



お前のものなんだから、と父上は言った。



「おおー…やっぱすごいでござる!」



大きな自転車の乗り心地に感動する兄上。



カッコイイなぁ。



「…」



兄上は自転車に跨がりながら嬉しそうにブレーキを握ったりしている。


……いいなぁ……。



「うらやましいか?」


『へっ!?』



私の心を読んだのか、突然父上が口を開いた。


父上は読心術なんて使えないはずなのに…。



『…ううん…べつに。』



そして、私がそっぽを向いていると、父上が向こうにいた兄上を呼びつけた。



「ちょっと来い。」


「?」




ひょいっ


『きゃあ!!』



すると、突然父上に持ち上げられた。


丈の短い【くのいち用】の着物だから、あんまりじたばた出来ない。




 
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