短編
□また一つ"好き"が増える
1ページ/2ページ
『あっつーい!』
今夜は蒸し暑い、熱帯夜だ。
本当、やってらんない。
「でも俺…夏って、結構好きだよ。」
『え?』
仕事帰り、二人で歩いていると山崎さんが突然言い出した。
「夏ってさ、たくさん好きなモノあるじゃない?」
『…んー…』
私は夏を思い浮かべる。
祭に海に、花火とか…?
蒸し暑いけど、好きなものはいくつかある。
「まず、空だね。」
山崎さんは空を指差す。
『確かに…綺麗ですね。』
見上げると、夏の夜空に満点の星が散らばっている。
私も、好きだ。
「でしょ?…次は、食べ物かな。」
『…食べ物…。』
私の頭には美味しそうな西瓜やかき氷が浮かぶ。
気のせいかもしれないが、夏祭りで食べるものは何でも美味しく感じる。
「それから、海。」
山崎さんは目を閉じた。
『…』
私も目を閉じて、夏の青い海を想像する。
「どうかな?」
『…素敵です…。』
ミントンやらカバディやら、山崎さんの趣味には理解しがたいものがあったけど、何だか今日はとても頷ける。
「それで最後に、俺が四季を通して好きなものがある。」
山崎さんは付け足すようにして言った。