短編

□また一つ"好き"が増える
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『あっつーい!』



今夜は蒸し暑い、熱帯夜だ。


本当、やってらんない。



「でも俺…夏って、結構好きだよ。」


『え?』



仕事帰り、二人で歩いていると山崎さんが突然言い出した。



「夏ってさ、たくさん好きなモノあるじゃない?」


『…んー…』



私は夏を思い浮かべる。



祭に海に、花火とか…?




蒸し暑いけど、好きなものはいくつかある。





「まず、空だね。」



山崎さんは空を指差す。



『確かに…綺麗ですね。』



見上げると、夏の夜空に満点の星が散らばっている。



私も、好きだ。





「でしょ?…次は、食べ物かな。」


『…食べ物…。』



私の頭には美味しそうな西瓜やかき氷が浮かぶ。



気のせいかもしれないが、夏祭りで食べるものは何でも美味しく感じる。






「それから、海。」



山崎さんは目を閉じた。



『…』



私も目を閉じて、夏の青い海を想像する。



「どうかな?」


『…素敵です…。』



ミントンやらカバディやら、山崎さんの趣味には理解しがたいものがあったけど、何だか今日はとても頷ける。




「それで最後に、俺が四季を通して好きなものがある。」



山崎さんは付け足すようにして言った。





 
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