◆Library◇
□チョコよりも…
1ページ/2ページ
お菓子(かし)が好きな貴方(あなた)に
ちょっとした悪戯(いたずら)と
もう1つの思いを乗せて…
貴方に贈(おく)るチョコ。
チョコよりも…
「おはよう、セバスチャン。」
S「おはようございます、お嬢様。
今日はお早い起床ですね?」
「だって、今日は年に1度しかないイベントがあるのよ?
寝てなんかいられないわ♪」
S「左様で御座いますか。」
「セバスチャン。頼んでおいたモノはある?」
S「はい。キッチンに御用意しております。」
「ありがとう!」
そう言って、私はセバスチャンに屈(かが)むように促(うなが)す。
セバスチャン、身長高いんだもん!
「これはお礼ね♪」
チュッ
私は、セバスチャンの頬に口付けをした。
S「…ありがとうございます(微笑)」
驚いた顔を一瞬だけ見せ、直ぐに笑顔を浮かべる。
私にとって、
セバスチャンはお兄さんのような存在。
セバスチャンも妹のように可愛がってくれるから、大好きなの。
「それじゃぁ、キッチン借りるね!」
S「何か御座いましたら、お呼びください。直ぐに参ります。」
「うん!」
セバスチャンと別れ、キッチンに向かう…んだったんだけど…
「その前に、“見てから”にしよう♪」
私はある場所に向かった。
◇◆◇
大きな扉の前に、私は立っていた。
そぉっと開けて中に入る。
中は薄暗い。
厚手(あつで)のカーテンが窓から入る光を遮(さえぎ)っているから。
その傍(そば)にダブルサイズのベッドが置かれている。
ゆっくりと近付く。
「寝てる…(微笑)」
可愛い寝顔で寝ている。
“悪の貴族”だとか“女王の番犬”と言われる彼…シエル・ファントムハイヴ伯爵。
私の愛しい恋人。
この可愛い寝顔を見に来たのだ。
(可愛い〜♪)
頭を撫(な)でる。
サラサラとした髪の感触が心地いい。
心なしか、シエルの表情が穏やかなものへと変わっているような気がする。
「また後でね。」
髪の上から、額にキスを送る。
そしてシエルの部屋を出て、キッチンに向かった。
◆◇◆
「バルドー、おはよう♪」
B「おぉ、嬢ちゃん。おはよう。
今日はやけに早く起きたな。」
「今日はバレンタインデーだよ!」
B「なるほどな!
坊っちゃんにチョコ作るのか?」
「うん!
あ、もちろん、皆にもね!」
B「やったぜ!楽しみにしてるからな!」
「頑張ります!」
エプロンを身に付け、セバスチャンの用意したファントム社のチョコレートを使って、お菓子作りスタート!
作るのは、ソフトクッキーをチョコレートでコーティングしたもの。
まずはクッキー作りから始める。
生地を作る際、砂糖は少なめに…空気を潰(つぶ)さないように、混ぜていく。
ハート型の型(かた)でくり貫(ぬ)き、オーブンで焼く。
その間に、チョコレートを湯煎(ゆせん)する。
量が多いから結構大変(汗)
クッキーが出来たら、湯煎したチョコレートの中に入れ、コーティングする。
後は冷蔵庫で冷やして出来上がり!
丁度時間は朝食の時間。
エプロンを脱いで、朝食を食べるためにキッチンを離れる。
◇◆◇
C「クオリア、おはよう。」
「おはよぉ。」
C「珍しく来るのが遅かったな。
何かしてたのか?」
「内緒♪」
C「…まぁ、いい。
直にわかることだろうからな。」
悪い顔で笑うシエル。
私がシエルの為にチョコを用意しているとわかっているからだろう。そんなところが可愛くてしょうがない。
C「楽しみにしているからな。クオリア。」
「うん!」
シエルのチョコは“特別”。
だから、もちろん普通じゃない。
どんな顔するかな?
私も楽しみだ。
朝食を食べた後、私はキッチンに戻り、シエルとセバスチャン以外の全員にチョコクッキーを配った。
セバスチャンは悪魔だから、たぶん食べないからあげないだけで…深い意味はない。
後日、何かプレゼントするつもり。
何にも貰(もら)えないのは、可哀想でしょ?
そして、私はシエルにチョコを渡すために書斎へ向かった。
…―コンコン
ノックをする。
C「入れ。」
扉を開けると、書類に目を通しているシエルが目に入る。
シエルは私を見ると、微笑んだ。
C「お楽しみの時間か?」
「だから、休憩しよ?」
C「わかった。」
シエルが書類をデスクに置く。
C「今回は何を作ったんだ?」
「うーん…チョコレート。」
C「チョコレートを加工しただけってことか?」
「まぁ、そんなとこ。」
C「早く食べたい。」
「今、持ってくるね!」