◆Library◇

□パンドラの箱
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僕の中に収まる記憶…
そこに目を向けてはいけないと決めたのに、ある日僕は目を向けてしまった…―


パンドラの箱


C「ここは…?」

辺りを見渡しても、どこまでも広がる黒、クロ、くろ…

困惑(こんわく)していると、突然一点に光が灯(とも)る。
そこには、箱がポツリと置かれていた。
僕はその箱の傍(そば)へ寄る。

C「何なんだ?これは?」

注意深く観察する。
その箱はとても手の込んだ装飾(そうしょく)が施(ほどこ)され、まるでジュエルボックスにでも使われそうなモノだった。

僕は恐る恐るその箱の蓋(ふた)を開けた。

C「…っ!」

突如(とつじょ)として、光が溢(あふ)れる。

眩(まぶ)しさが消えたのを感じ、目を開くと、先程まで黒しかなかった場所が、いつの間にか屋敷の庭に変わっていた。

C「!?……一体、どういうことだ?」

キョロキョロと辺りを見回す。
間違いなく、僕の屋敷の庭だ。

『アン叔母ちゃま、
ご本よんで!』

『よんでーっ』

『ゴルァー!!シエル!リジー!
おばちゃんってよぶんじゃないって言ってるでしょ!
お姉様とおよびッ』

『『きゃーッ』』

C「これは……」



幼い頃の記憶…
この時は本当にしあわせだった…



マダム・レッドに捕まり、騒(さわ)ぐ僕ら。
お母様がマダム・レッドに声をかける。

『いつも悪いわね。遊んでもらって。』

『いーのよ!
子供好きだし、それに…』

犬のセバスチャンが吠(ほ)える。

『あっお父様だ!お帰りなさい。』

そう言って、“僕”とリジーとセバスチャンはお父様に駆(か)け寄(よ)る。お父様は“僕”を抱き上げた。

『天気がいいから子供達と遊ぼうと思ってね。
後はタナカに任せてきてしまったよ。』

だっこーとお父様にせがむリジー、お父様に抱き着いて笑顔の“僕”…
それを微笑み寄り添(そ)うお母様、
“僕”を抱きながら、微笑むお父様。温かい日々…

突然場所が変わる。

C「今度は、いつの記憶だ?」

屋敷なのは変わらないが、
今度は屋敷の中だ。

誰かが走っている音が聞こえる。

『誰かっ』

扉を開ける音。

『ねぇっいないの!?』

再び扉を開ける音。
また駆け出す音がして、そちらを見ると、“僕”がこちらへ走ってきていた。

荒い息…
さすがに疲れたらしく、膝に手をついて息を整えようとする。
直ぐ傍の部屋で、

『ギャウッ』

犬のセバスチャンの叫びに似た鳴き声が聞こえる。
そこに、“僕”は入った。
目に入ったのは、横たわっているセバスチャン。
触れたら、手にべっとりと血がついた。


視線をセバスチャンの隣に移す。

『お父様!!お母様ァ!!』

母様を抱くように、父様が母様と倒れていた。
辺りは血の海…
涙が滲む。

勢い良く扉を押し退(の)け、叫ぶ。

『誰か助けて!!みんな死んじゃう!!!』

廊下を駆(か)ける。

ある角でタナカを見つけ、必死で訴(うった)える。

『タナカッ助けて!!!』

『こちらに来てはいけません!!』

タナカが“僕”の傍へ来る。
険しい顔で。

『お逃げください!!
シエル様は…あなた様には酷すぎ…ッ』

タナカが突然体勢を崩す。
口から血が垂れていた。
タナカの背後に血のついたナイフを持った人物が立っていた。
性別はわからない。

『タナ…』

“僕”は痛みを感じた後、倒れた。
意識を手放す前、朦朧(もうろう)とした意識の中、会話が聞こえたのを覚えている。

『こいつは頂いていくか。
いい金になる。』

『本当モノズキってのはいるもんだぜ。』

ここから先は、悪夢でしかない。

『おお…これは!』

『珍しいでしょう?』

檻の中に“僕”は入れられ、その上から布がかけられている。布をめくり、貴族らしき年老いた男性とボロい服を来た男が話している。


『これは二人分以上の価値があるぞ!』

『毎度』

金を男に渡す。
“僕”はこの貴族に買われたのだ。

どこだかわからない場所へ連れていかれた。

そして…
あの地獄(じごく)のような日々は始まる。

『お前には崇高(すうこう)なる獣(けもの)の印(しるし)をあげようね』

あああ゛あああああ

『ほら可愛くなったよ。』

“僕”は背中に焼き印を押された。一生消えない傷…憎(にく)くて堪(たま)らない。

(だして だして ここからだして いたい きたない かえりたい おとうさま おかあさま かみさま どうか)

誰も助けてはくれない。

『さあ今宵(こよい)も崇高なる集会(ミサ)を始めようじゃないか。』

(なぜ どうしてぼくたちが
誰も助けてくれない
神なんていない!!!)

そう救いなど容易く得られはしない。
神なんて所詮は人間が造り出した幻想。

(こいつらをこいつらをこいつをこいつらをこいつらをこいつらを)

憎しみは膨れ上がる。
ナイフで切りつけられる中で、僕は決意した。


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