◆Library◇

□チョコじゃなくて…
1ページ/2ページ



パリーン!!

何かが割れる音がキッチンに響いた。

「やっちゃった…」

B「大丈夫か?嬢ちゃん。」

「うん。」

キッチンにいたのは、料理長のバルドとこの屋敷の主ファントムハイヴ伯爵の恋人クオリアの2人。
どうやらクオリアがお皿を割ってしまったようだ。

「片付けるね。」

クオリアがしゃがむ。

B「いいっていいって!嬢ちゃんに手伝わせるのも悪ぃのに、片付けさせんのはよ。第一、怪我なんかしたら…」

「痛っ…」

B「言ったそばから…」

クオリアは指先から血が滲(にじ)んでいた。
お皿の破片で切ったのである。

C「クオリア?」

「あ!おはよう♪シエル。」

この屋敷の主がキッチンへやって来た。

C「って、血が出てる!何してんだ、お前は!」

「ごめんなさい…」

シエルがクオリアに歩みより、クオリアの血が出ている手を取るとその指を口に含(ふく)んだ。

「///」

顔を赤くするクオリア。
指先がシエルの口から離れる。


「ありがとう…///」

C「気を付けろよ?」

「うん!」

S「坊っちゃん。このような場所に来てはいけません。」

C「わかってる。そんなことよりセバスチャン。クオリアの手当てをしろ。」

S「手当て…?あぁ、指を切ってしまわれたのですね。畏(かしこ)まりました。」

C「僕は書斎に戻る。また後でな、クオリア。」

「うん!」

シエルはキッチンを出て行った。

S「お嬢様、手当てを致(いた)します。此方(こちら)へ。」

◇◆◇


S「お嬢様…貴女(あなた)もあのような場所で手伝いなどしなくていいんです。わかりますね?」

手当てをしながら、セバスチャンがクオリアを叱(しか)る。

「うん…でも…」

S「お気持ちはお察しします。ですが、このように怪我(けが)をされては困るのです。」

「…ごめんなさい。」

S「でも、貴女のそういう優しさはとても嬉しいことです。」

セバスチャンがクオリアの頭を撫でる。

S「だからそんなに悲しい顔はなさらないでください。」

「うん。ありがとう!」

S「さぁ、手当てはこれで終わりです。もうよろしいですよ。」


「部屋戻るね。手当て、ありがとう!」

笑顔でその場からクオリアは去っていった。

チリーン

綺麗なベルの音が聞こえる。

S「何のご用でしょうかね…?」

救急箱を片付け、セバスチャンは呼び鈴の音の発信元へ向かった。

◆◇◆


コンコンッ

C「入れ。」

S「失礼します。」

扉を開けてセバスチャンは書斎(しょさい)へ入った。
シエルは書類から目を離し、セバスチャンを見る。


S「お呼びですか?」

C「“例の物”は届いたか?」

S「はい。今朝届きました。」

C「躾(しつけ)もしっかりしてあるな?」

S「はい、ご心配なく。」

C「昨日も話したが、決行するのは午後の紅茶(アフターヌーンティー)の後だ。」

S「承知しております。」

C「なら、いい。」

S「そんなに心配せずとも、失敗しませんよ。」

C「…別に、確認しただけだ。」

S「クスクス…」

C「もう用は済(す)んだ!さっさとお前はお前の仕事に戻れ!」

S「はい。それでは失礼致しました。」

何やら、2人は何かを企(たくら)んでいる様子。

あっという間に時間は流れ、午後の紅茶(アフターヌーンティー)の時刻。


書斎には紅茶の良い匂(にお)いと、スイーツの甘い匂いが広がっていた。

「美味しい!」

S「ありがとうございます。」

C「…クオリア。」

「うん?」

C「今日が何の日か、知ってるか?」

「今日?」

うーん、と唸(うな)りながら考えるクオリア。

「わかんない…」

ごめんね、と苦笑いを浮かべた。

C「聞いただけだ。特に意味はないから、気にするな。」

そう言って、スイーツに手をつける。
?を頭に浮かべながらも、クオリアもスイーツを食べ始めた。

◇◆◇


「うーん。はぁ…」

グッと伸びをして、息を吐く。
クオリアは午後の紅茶(アフターヌーンティー)の後、庭に出ていた。

「何しようかな?あれはやったし、これは…うーん…やる気にならないし…」

1人ブツブツと午後をどう過ごすか考えていた。

バサバサ

「へ?」

何かが羽ばたく音が間近に聞こえて、音のする方に目を向けた。

「白い…鳩(はと)…?」

地面に降(お)り立つと、クオリアの方にトテトテと寄ってくる。

「人懐(ひとなつ)っこいのかな?」

鳩が逃げる気配(けはい)はない。

「何処から来たの?」

答えるわけはないが、話しかける。


次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ