◆Library◇
□チョコじゃなくて…
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鳩の独特の鳴き声をあげる。
「可愛い〜♪」
頭を撫でる。
「鳩に触ったの初めてだよ。」
バサバサ
再び、羽ばたく音がする。
しかし、その音は目の前にいる鳩ではない。
「もう1匹いたんだ!」
此方も白い鳩と同じ様に、クオリアに寄って来た。
「君は、黒いんだね…烏(からす)かと思っちゃったよ?」
後から来た鳩は色が黒い。
鳩で黒とは珍しい。
それともう1つ違いがあった。
「手紙…?」
黒い鳩の足に小さな筒(つつ)のような物がついていて、中には手紙が入っていた。
[温室の中に来てくれ]
ただそれだけが書かれていた。名前は書いてない。
「シエルったら…何かしら?」
字が恋人のものだとわかったようで、何の疑問もなく指定された温室へ向かう。
◆◇◆
「いないなぁ…」
温室に来たクオリアだったが、いると思われていた人物はいなかった。
「まだ来てないのかな?」
周りを見回す。
「きゃぁ!?」
突然悲鳴をあげて、1歩下がる。
「びっくりした…君達か…」
驚いた原因…
足元に先程の鳩達がいて、クオリアの足に擦(す)り寄ったのである。
「ついて来たの?」
鳩達はクオリアの顔を見ていたが、歩き出した。
「行っちゃうの?」
そんな声を無視するかのように歩き続ける。
突然ピタリと足を止めた。
再びクオリアの顔を見ている。
何となくクオリアが歩み寄る。
するとまた鳩達は歩き出し、止まる。
またクオリアが歩み寄る。
「案内してくれてるの?」
そう思い、クオリアは鳩達について行くことにした。
そうして辿(たど)り着いた場所は、色とりどりの花が咲(さ)き乱(みだ)れるところだった。
そこの中を通れるように煉瓦(れんが)で作られた道を歩いた先に、白い薔薇(ばら)が多く咲く場所に出る。
薔薇はアーチに沿(そ)うように咲き、白い薔薇のアーチが出来ていた。
その中に1本脚(あし)のテーブルが置かれていて、その上に可愛らしく包装(ほうそう)された箱があった。
「開けて…いいのかしら?」
恐る恐るその箱を手に取り、包装を解いていく。
「ペンダント…?」
楕円形(だえんけい)のペンダントトップに深い海のような青い宝石が煌(きら)めいているシンプルなペンダントだった。
「綺麗…」
箱の中にメッセージカード入っていることに気付き、読み始める。
[ホワイトデーのお返しだ。受け取ってくれ。
愛してるよ、クオリア。 from シエル]
クオリアは駆(か)け出した。
勿論(もちろん)、愛しい彼に会うために。
◇◆◇
「シエル!」
ノックもせずに書斎の扉を開ける。
シエルはそれを咎(とが)めず、笑顔でクオリアを迎(むか)えた。
C「今日はホワイトデー。喜んで貰(もら)えたかな?」
「勿論だよ!私も愛してるよ、シエル!」
C「当然だ。」
チョコを贈(おく)るより
此方(こちら)の方が
いつまでも君のもとに
残るだろう?
チョコじゃなくて…
ペンダントが
ペアであるのは
まだ秘密(ひみつ)。
愛してるよ、クオリア。
次は指輪(ゆびわ)を贈るから、待っていて。