◆Library◇

□許されるなら…
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姉と再会したあの後、姉を部屋に案内し、僕は仕事に戻った。
本音では、姉と話をしたいし触れ合いたい。
しかし、僕は僕のすべきことを完璧にこなさなければならない。
僕の本音などとるに足らない価値だ。

僕は黙々と作業を続けた。

◆◇◆

コンコンッ

c「入れ。」

s「坊っちゃん、午後の紅茶(アフタヌーンティー)のお時間です。」

c「もうそんな時間だったか…」

時間の経過に気付かず、作業をしていた。
通りで疲れが感じられたわけだ。

コンコン…

遠慮(えんりょ)がちに扉が叩かれる。

c「?…入れ。」

扉を少し開けて、姉が顔を出す。
その顔は、どこか悲しそうに見えて…

c「どうした?」

その言葉と共に姉との距離を詰(つ)める。

「…」

しかし、姉は口を開かない。
さらに距離を詰める。

c「…僕には話せないことなのか?」

優しく問いかける。
それでも話そうとはしてくれない。
いつも強気な姉がここまで黙り込むのは余程のことだと思う。
何としても聞き出さなければならないと、そんな気がした。

c「セバスチャン、お前は下がれ。」

s「御意(ぎょい)」

何か言われると思ったが、何も言わず大人しく悪魔は部屋を後にした。
そんなことより、今は姉が優先事項だ。

僕は姉との距離を完全に無くす。
そっと姉を…クオリアを抱き締めた。

c「!」

腕が背中に回されたのがわかった。
拒(こば)まれないことへの安堵(あんど)が僕の気持ちを和(やわ)らげる。

c「久し振りに姉様に触れることが出来て嬉しいよ。」

核心を突かず、他愛もない話を振る。
無理に聞くのはきっと逆効果だから。

「…私も」

c「ん?」

「私も、嬉しいよ。」

僕の顔に自然と笑顔が生まれる。
やっとクオリアの声が聞けた。
こんな些細(ささい)なことで僕の気持ちは踊(おど)る。単純だ。

「…シエル」

擦(す)り寄るクオリアが可愛くて仕方がない。
頭を撫でる。
そして、頭に口付けた。

c「そんな驚いた顔するなよ。昔は良くしてただろ?」

口付けたその後直ぐに、こちらを見上げ、見開く目。
昔は何ともなく受けていたのに…
ちょっと悲しく思ったのは秘密だ。

「シエルは…」

c「?」

「シエルは、私のこと…どう思っているの…?」

まるで懇願(こんがん)するかのような、辛そうな顔…
僕は直ぐに察した。

"クオリアは僕と同じ気持ちがある"

だからそんな顔してるのか?
もしそうなら、そんな必要はない。



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