long story

□参
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新八と神楽が弁当を取りに行っている間、私はもう少し涼しい場所を求め、木陰が集まる場所へ足を進めた。



私が万事屋に拾われてから早3ヶ月が経つ。


3ヶ月前、私は路頭に迷っていた。
身も精神もやつれ、何処に行く宛ても無い、只ひたすら身体を引きずって歩いていた私を万事屋が迎え入れてくれた。


帰る家があるというのは、やっぱりいいもんだね。

3人は、普段からじゃあ分からないけど、本当に優しい。警戒して心を閉ざしていた私にめげずに話しかけてくれた。時折不安になれば、大丈夫と言ってくれた。寂しい時は何も言わずに側に居てくれた。


私はこの3人に救われたんだ。


だから今度は私がこの場所を守ると決めた。
私の大事な家族、私は今度こそ守るために戦いたい。



木陰に辿り着き、木の幹にもたれかかる。

ずっとこんな日が続くといいな。
楽しくって、安心できて。


そんな風に柄にも無く感傷に浸っていたもんだから、目の前に立っている人物に気がつくのに遅れてしまった。










「やあ。」





そう言って目の前の男は薄っぺらな笑みを向けて見せた。



驚いた。目にするまでその人に気がつかないなんて、余程私の感覚が鈍ったのか、それとも目の前のその男が只者ではないのか。


私は未だ意味深な笑顔を貼り付けている男を見た。



年は同じくらいだろうか。黒いチャイナ服を身にまとい、男にしては長い赤毛を後ろに三つ編みで束ねている。

肌は白く、手には日傘を差していた。


瞬時に神楽を連想させる。




「夜兎...?」



私が聞くと男はスッと目を開く。口元は笑ってはいるものの目が笑っていない。



「へえ。俺らと面識あるの?」


答えるか躊躇ったが、返事をする代わりに首を一つ振った。
男はふーんと言い、またあの笑顔を作る。



「じゃあ話は早そうだね。俺探してる人が居るんだ。侍ってやつなんだけど。」



侍...?

侍なんて思い当たる人物だけでも沢山いる。彼が言っている侍とは誰の事を差しているのか分からない。

分からない筈なのに、脳裏に銀さんの姿がチラつく。



「侍は沢山いるけど、私の知ってる人かな?」



「知ってると思うよ。その侍、



銀色の髪をしていたんだ。」




トクン──....




胸騒ぎがした。
凄くこの人と銀さんを会わせたくない、会わせてはいけない気がした。
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