long story
□泥門の悪魔
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〜セナside〜
「セナ!」
主務として校庭で練習に参加しているとまもり姉ちゃんが話しかけてきた。
「何、まもり姉ちゃん?」
「今日セナの教室に転校生が来たんだってね?お友達になれた?」
「あ、うん。あ、いや、でも」
“オーラが違うよね〜”
そんなことを誰かが言ってた。
「友達には……なれなかったかな……?」
なんていうか、本当にあの人達こそ“住む世界が違う人”って言うんだろうな〜……
「もう、セナったら。いつも自分から話しかけにいかなきゃだめだよって言ってるでしょ〜。」
まもり姉ちゃんがしょうがないなとため息をつく。
でもそのあと、
「ま、でも、今日でなくっても話しかけるチャンスはいくらでもあるんだから頑張ってね!」
と、背中を叩いた。
「どうしたの〜?」
「あ、栗田さん!」
僕らの後ろからズシンズシンと歩いてきた栗田さんの迫力は相変わらず凄い。
「いや、その、うちのクラスに転校生が来たんです。それでその話を……」
「転校生?ああ、僕らも聞いたよその話。二年生の間でも話題だからね、美男美女カップルが来たって。珍しいよね〜この時期に転校するなんて。」
カップル?あの二人ってやっぱそういう……
確かに仲良さそうだったし……
「やっぱその二人も部活とか入るんだろうね。女の子の方はちょっと無理だと思うけど男の子の方はうちの選手になってくれないかな〜。」
栗田さんがキラキラした目で学校の方を見た。
月野君か――……
確かになってくれたら嬉しいけど……
僕はどうしてもあの二人と仲良くなれる気がしなかった。
それぐらい彼らには輝きがあって、僕みたいな万年パシりにはどうあっても釣り合わない。
「おい、テメーら!サボってねーでサッサと練習始めねーか!!!王城戦は明日なんだぞ!!」
僕らが話しているといつの間にかマシンガンを向けているヒル魔さん。
「は、はいぃぃい!」
僕は急いでそこを立ち退いた。
「ねえ、ヒル魔。」
「ぁんだ豚マン、テメーもさっさと練習開始しろ。」
「うん、あのさ、セナくんのクラスに入った転校せ「イラね。」
栗田さんが全部言い切る前にヒル魔さんは身を翻し答えた。
「確かに入ってくれるかは分からないけど、でも一応声掛けぐらいは……」
「聞こえなかったのか豚マン。いらねーつったろ。」
栗田さんは理由が分からないといった感じだ。
「でもヒル魔、アメフト初心者でも練習すれば、」
ヒル魔さんは聞き分けのない子供を見る目で「チッ」と舌打ちした。
「あぁ、確かにアメフト経験者なんて鼻っから期待なんてしてねー。初心のやつでもある程度鍛えりゃ試合だって出す。
けどなー、アイツのあんなヒョロヒョロの体にそんなアメフトできる体力があるとは思えねー。ま、糞チビみたくパシられ続けられてたってんなら多少希望はあるがな。」
と、ケケケと笑う。
「こっちはギリギリの人員でやってんだ。基礎体力から鍛えあげる暇なんざねーんだよ。」
そしてそのまま部室へと戻っていった。