long story

□壱
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"歪"


人間は多かれ少なかれこの存在に恐怖を覚える生き物だ。
それが例え無害だったとしても隔離し、遠ざけ、蔑む。
嗚呼、可哀想に。そんな台詞を口にする奴等だってそれっきりの偽善者ばかり。

結局群れてなきゃ生きられない生き物。結局埋もれることによってでしか安心できない弱い生き物。



私が生きてきた時間の中分かったことはそれだけだ。

愛情、友情


快楽、悲観


私は何も知らない。
私にとって世界は無であり何も与えてはくれない空虚なものなのだ。


"天狗"


それが私の先祖返りであり、私の"歪"と言われる部分。

しかし"歪"の中でもこの"先祖返り"は特殊であった。人畜無害どころか、代々先祖返りがいる家は栄えるという言い伝いから人々は私を邪険にすることもできず、かといって近づけることも躊躇った。

取り敢えず念には念をと幼い頃親元から引き離されてからはある一室に隔離され続けていた。その年数は早いもので15年。
食事、勉強、就寝。24時間365日私は一歩も外に出ることを許されことなく暗い孤独なあの空間で人生を過ごしてきた。


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