long story
□参
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「どうしたのかしら?」
私が出て行ったあとのラウンジは何が何だか分からないといった空気が流れていた。
「う〜ん、これはかなり手強いかもね〜……。」
「やはり何か視えました、夏目?」
並木は夏目の方へ行き二人にしか聞こえないような小さな声で言った。
「う〜ん、まぁ……ね。」
「何が視えたのですか?」
夏目は暫く「うーん」と考えてから、逆に並木に聞き返した。
「竜たんはどこまで聞いてるの?」
並木は一瞬眉を潜めたがすぐにいつもの笑顔に戻し、
「彼女が天草家の、天狗の先祖返りで、家の方針で一人暮らしをさせるためこの妖館に寄越したということしか。」
すると今度は答えを聞いた夏目の顔から笑顔が消えたがこれもまたいつものふざけた顔に戻った。
「全く……喰えない男だねぇ……。」
「どうかしました?」
「ううん、何でもないよ〜☆」
キャハッと可愛い顔をしてから今度は一つトーンの低い声で、
「ま、でもひかたんの今までの生活状況からして、人と関わるのは難しいかもね。」
「………そうですか。」
そう言い並木は自分の主人を探すべく部屋を出た。
そのあと言った夏目の一言に気づかずに。
「まさか目を持ってしても視えないヒトがいるなんてね〜……。」
夏目は並木が出て行った方向を見つめながら意味深に笑った。