long story
□五
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「御狐神君。ぼ、僕は今日、言葉遣いに気を付けようと思うのだが、その……も、もしもの時は……」
「はい。その時は僕が不束ながらフォロー致します。」
時刻は二時五分前。
凛々蝶様と僕は今、天草 光さんの部屋の前にいる。
凛々蝶様は夏目さんの提案があってから落ち着かない様子で。しかし、そんな凛々蝶様も純粋でとても可愛らしく、茶菓子を真剣お選びになられる姿など………
嗚呼、凛々蝶様は一体何処までお優しく、素敵な方なのでしょう。
そんなこんなで時間は過ぎ、現在に至るわけですが。
「凛々蝶様、二時を回りました。約束の時間です。」
「あ、ああ、そうか。」
しかし凛々蝶様はドアノブに手を掛けこそはするものの、なかなか引こうとはしない。
緊張をしておいでの様子。
「お、おお落ち着け僕。お茶に誘うだけではないか。いや、しかしもし彼女が紅茶を苦手としていたら……。やはり今から珈琲豆を取りに行くべきなのか……。茶菓子はクッキーで良かったのだろうか。」
こんなに凛々蝶様に思われていて天草さんが少し羨ましく感じます。
「凛々蝶様。大丈夫ですよ。凛々蝶様とお話できるというだけで天草さんも喜ばれるかと思います。」
僕同様に。
「ふん、そ、そんなの分かっている。」
凛々蝶様は一つ深呼吸をして、ついに扉をノックした。すると扉の向こうから、
「だ、誰!?」
「おや、いらっしゃったようですね。」
扉が開かれた。