long story
□弐
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「千尋みつけたアル!」
暑さでうな垂れていた私を小さな影が捉える。見上げれば相変わらず肌の白い少女が顔を覗かせた。
「みつかっちゃったか。」
私は立ち上がった、その瞬間一瞬立ちくらみに合う。
「神楽は大丈夫?暑くない?」
くらくらとする頭を抱えそう問いかけると、日傘を差した彼女は顔を赤く火照らせながらも「大丈夫アル」と笑った。
神楽は姿形は私達に似てはいるものの、人間ではない。彼女はこう見えても皆から恐れられる、宇宙最強の戦闘部族夜兎だ。
彼らは戦場の神に愛された、でも太陽の神からは嫌われたらしく日差しを浴びることを許されない。
「神楽ちょっと休んで。顔赤いし。」
「千尋は心配性アルなー、私はまだ元気アルよ?」
「千尋ちゃーん!神楽ちゃーん!」
呼ばれた方を見ると只のメガ...新八が手を振りながら此方に駆けてきた。
「あれ...?なんか今軽くディスられた気がするんですけど...?」
「き、気のせいじゃない?」
こいつはエスパーか。
ここまで空気が読めるとなると一種の超能力のような気もする。
てか、よくよく見ると、
「新八どうしたのその怪我?」
上から下まで全身泥まみれの傷だらけだ。
「いやー、僕いつもすぐに見つけられちゃうから...その、木の上なら見つからないと思って、ちょっと登ってみよっかなーって試したら「コケてこのザマアル。」」
神楽に言葉を遮られたが、返す言葉が無い新八は、うっ、と言いながら羞恥を隠すように下を向いた。
まあまあ、夜兎の神楽は木から落ちるなんてことあり得ないかもしれないけど、結構人間にとっては登ることも労力いるんだよ?
まあ、
「新八怪我見せて。」
私も”普通の”人間では無いけど。
目の前に立つ新八に自分の手をかざす。
気を集中させれば光の壁が彼を包む。
誓約の唄を歌う。
「花はきらめく───
魔法の花───...♩」
すると暖かい光が放たれ、彼の傷口を癒していく。
「時を戻せ
過去に戻せ
過去の夢───...♩」
歌い終わった頃には彼を包んでいた光は傷と共に跡形も無く消えた。