long story
□弐
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声の主を辿っていけば目の前。いつから居たのか、スーツ姿の何やら紳士的な雰囲気をかもち出している男性がこちらに向かってお辞儀をしている。
嗚呼、そうか、この人が例の
「SS……。」
お目付け役。
「左様でございます光様。私の名は並木 龍之介と申します。以後お見知りおきを。」
返事の代わりに一つ首を動かせば「ささ、」と私を建物内へと誘導する。
中はやはり想像通り豪華で私の胸を幾分弾ませることが出来た。
「ところで光様。」
歩いている途中話し掛けられた。
「………。」
何だか緊張する。何せ私は誰かと話すということは人生の中で数えても両手の指で収まるほどぐらいしかない。
「光様?」
「は……い?」
「お荷物等は後程届く形となっていらっしゃるのですか?」
どうやら手ぶらの私を見て疑問に思ったらしい。
荷物………。
「無い。」
「と、申しますと?」
「荷物は無いのです。」
それを聞いた並木という男は少し眉を潜めたが再び何時もの笑顔に戻し「では、」と続けた。
「では一度部屋で一息ついてから買い出しに行くというのはどうでしょう?」
「いや………今日はいいのです。」
久しぶりに外に出て、人混みに揉まれて既にクタクタなのだ。
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