long story
□六
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そこに立っていたのはボサボサの頭を後ろで結わき、その顔では似合わない黒い学ランを身に纏った少し肌の黒い男性。
「あれ、もしかして俺のこと忘れちゃった?」
忘れた……?
私の人脈なんてそう広くはない。それなのに忘れた?
いや、見たことないのではないか?
「俺だよ俺、反ノ塚 連勝。」
反ノ塚……。
その単語を聞いて浮かび上がるものは、夏目曰く一反木綿と呼ばれる黒い布。
私はその反ノ塚と自称する男をもう一度見る。
どう見ても昨日の姿からはかけ離れている。しかし先祖返りの者は、私しかり、皆通常人間の姿になる。とするとあれは人間時の姿なのか。
「思い出してくれた?」
確かにこの気だるい感じ、あの一反木綿が持っていたものと同じ。
私は返事の代わりに扉から一歩下がって道を開けた。
「サンキュー。」
反ノ塚は扉を開けそして、
「お前も入るだろ?」
と言い私に目を移した。
入る、入りたいが。
下を俯くだけの私。
反ノ塚はどうしたものかと頭を掻く。