long story

□九
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頭を撫でる夏目の手、優しい。

悪い人ではないのか。


一階に着き、エレベーターの扉が開く。


「ひかたん、取りあえず落ち着くまでどっか座っとく〜?」


座って……座ってその後……


「どこ行く……んですか…夏目?」


やっと絞り出したとても、とても小さな声。

しかし彼はそれをもすら拾い上げてくれた。


「ん〜、じゃあ教えちゃおっかな☆ボクらはね〜、これから渡狸達の居る学校に行こうと思ってるんだ♪」


先程の優しい雰囲気は何処かへ消え、また何時ものお茶らけた彼に戻っていた。


というか、学校……?


「竜たんは来週まで待ってって言ってたけど、ひかたんのためにも早いうちから慣れさせといた方がいいからね♪」


この人……。


「でも竜たん、そーたんと同じぐらい過保護だからね〜、そんな無理するようなこと許さないと思ったからちょっと外れてもらっちゃったの〜。」


この人……ただ楽しんでる訳じゃない。

ちゃんと私の事考えて、私のために行動してくれている。


「でも突然すぎちゃったね。ビックリさせちゃってごめんね?」


私は一つ頷いた。
気が付けば涙も落ち着いている。


学校……。
夏目の言う通り、どのみち行くなら早めが良いのかもしれない。

恐れていては何も始まらない。それに、


凛々蝶に、



夏目だっている。



「行こ………残夏。」




名前の呼び捨ては親しい仲の証。



少しずつで良い、私は自分の殻を剥がさなくては――……。




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