サクラサクラ


□4、黄土の砂嵐
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急に、蔵馬が私を避けるようになった。

魔界の穴騒動からしばらくして、急に、だ。




何?何かした?
学校の勉強を遅れていた分、一生懸命取り戻そうと必死だったから、蔵馬の家にもしばらくいっていない。

でもそれが原因とは思えない。
蔵馬のことだから、きっと何か私に隠している。




飛影もここのとこずっとうちに来ていないし、
ぼたんも顔を出さない。


待っていてはますます蔵馬に会えなくなってしまう。
学校でなら、きっと避けないだろうから。
私は、メールの返事もくれない蔵馬を訪ねるために、
お昼休みに蔵馬の教室へ向かった。














〜〜〜⏳〜〜〜⏳^^^




「あの、南野先輩・・いますか?」



私が覗いた高等部の2年生のクラスには、その目立つ容姿の赤い髪のその人の姿はなく、代わりに海藤さんが出てきてくれた。


「やあ、どうしたんだい?」

「南野先輩、いないんですか?」



「・・・ああ・・その、」



海藤さんは何か話を濁している。
何か知っているんだろうか?

困った表情の海藤さんと私。


話してくれそうにないなと、私は諦めて戻ろうかと思った時、
海藤さんが申し訳なさそうに口を開いた。



「あのさ、・・・今日南野休みなんだ。

たぶん、しばらく来ないんじゃないかな・・」




「おやすみ・・?
しばらく来ないって・・・」



さらに海藤さんは言葉を続けた。




「何も君には話してなさそうだね・・・。」



「・・何か、あるんですか?」


ここでは話しづらいと、二人で屋上へ登った。
屋上は昼休憩を静かに過ごしたい生徒が、数人いる程度だ。




「あの、海藤さん、蔵馬どこへいったんですか?
わたし実は、しばらく前から避けられていて・・。」



少し驚いた顔をした海藤さんは、すぐにメガネを持ち上げてかけ直し、いつもの表情に戻った。


「南野、少し前に・・
飛影や幽助くんたちと戦うことになるかもしれない、と言っていた。」


「え・・!?
なんで!」


「詳しくは知らないが、・・・多分魔界に行っていると思う。」





私は、思いもしなかった状況に驚きを隠せなかった。

なんで、私にみんな黙っていたの?
私だけ知らなかった?

また私だけ、安全なところに残されて、
みんなと一緒に、私も何かある時はできることを手伝うって・・


そう決めていたのに。




知らされず蔵馬に置いて行かれたことが、とてもショックで悲しかった。




「これは俺の推測だけど・・

南野、あいつのことだから、
君を巻き込みたくなかったんじゃないかな。

これ話した時のあいつの表情、俺も見たことない顔だった。
君に話していないってことは、多分だけど拘らせたくなかったんだと思う。」



海藤は、それでももう少し上手くやればよかったのにと、蔵馬に対して理解しつつも不器用さを感じていた。
思惟ちゃんのこととなると、南野はえらく人間らしさが表に出る。



「他に、何か言ってた?」



「他には何も聞いていないよ。
・・まさか行くきじゃないよね。」


若干冷や汗が出た。
俺の知っている情報で、彼女を危険な目に合わせた時には・・
きっと南野は怒るに決まっている。


「行く。行きたいけど、どこに行ったのか分からないと・・。」


「やめておいた方がいい。
南野が君に何も話さなかった訳を考えれば、危険だってこと以外考えられない。」


「でも、蔵馬に何が起きているのか知りたい。」



「・・・ねえ、君たちってさ、両思いっぽいとは思っていたけど

付き合ってるの?」




私は、私も聞きたかったことを、ぐっさりと海藤さんに聞かれて、喉から言葉が出なくなった。


「あ、、ごめん。
そういう意味じゃなくて。

君たちさ、なんか微妙な雰囲気だなって思って。」






「よく・・・・わからないんです。
好き・・だと自覚はしてますけど。蔵馬はどのくらい私を想ってくれているのか・・。」




その言葉で、南野のやつがはっきりしていないんだな、と
海藤はピンときた。
あんなに大切にしているくせに、
あんなに他の男に触らせるのを嫌がるくせに、

自分だけのものだと思っているくせに、

まだそれを伝えていないのか?


南野らしいというか、らしくないというか・・・




「・・とにかく、南野は君のことを思って言わなかったんだろうし、そのままこっちで待っていたらどうかな。」



「・・海藤さん、ごめんなさい。

私、魔界へ行きます!蔵馬や飛影や幽助君に会って来ますね。」





決めた!って顔した彼女は、すごく可愛かった。
もともと可愛い子だけど、笑うと・・もっと。



そう言って、可愛らしくお辞儀をした彼女は、さあ行きましょうと言わんばかりに屋上から校舎へ戻る扉を開けて、笑った。





「参るな、これじゃ南野も」


俺はまたメガネの位置を直すと、彼女の開いてくれた扉をくぐった。
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