サクラサクラ


□5、夢幻花の夢
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魔界トーナメント後・・





魔界はすっかり落ち着いたみたいだけど、
以前と大きく変わったかと言ってもそうでもないらしい。





ただ、飛影が魔界に住むことになったのと、
私も躯に魔界へ来ないかと誘われたけど、学校があるから断ったこと、蔵馬も今まで通りの生活をするから、一緒にいたいと思ったこと。


私は高校生になって、蔵馬は高校を卒業して就職。
幽助くんは、まだ魔界ですることがあるって残ったまま。
桑原くんはすごい高校に合格したんだって。


大会中にすっかり仲良くなった修羅くんと、時々手紙やメール交換するんだけど、絶対に将来イケメンになると思う。すっごい可愛いんだから。




私と蔵馬は、恋人として過ごし始めていた。
なんとなく前の感覚も抜けず、でもすっかり甘えん坊に慣れてしまった私は、蔵馬に遠慮なく甘えてしまっている。

一緒にいられることが、こんなにも嬉しくて幸せ。
南野先輩のお母様やご家族にも、すっかり公認になってご家族団欒にも時々お邪魔することもあった。


ついこの間まで、あんなにすごい大会をしていたとは思えないくらい、今は平和と思える。









ある出来事が起こるまでは・・・・



















〜〜〜⌛〜〜〜⌛〜〜〜



蔵馬が高校を卒業して、程なく一人暮らしを初めた。
お父さんの会社の手伝いをするための就職だったが、会社も家族も一緒よりは、少し距離があった方がメリハリがついていい、と。

ただ、それは口実で・・本当は大学に行かず就職にも理由があるようだった。








「思惟ちゃん、蔵馬のやつ一人暮らし始めたらしいけど、一緒に暮らすのかい?」


久しぶりに桑原くんの家に遊びに来て、雪菜ちゃんと静流さんと会っている。
勉強の話も盛り上がったけど、やっぱあのメンバーの話だよね。
おばあちゃんが亡くなって、その後幽助くんも戻ってきて、
ようやくみんなで集まって、と思った矢先。


蔵馬の様子がおかしい。





「・・・あのね、話そうか、

迷ったんだけど・・・」




「なんだ?なんかあったのか?」



桑原くんは、いつもいい相談相手だ。優しくてよく話を聞いてくれる。勉強忙しいのに、山奥に暮らす雪菜ちゃんのところにもよく会いに行っているし。



「静流さんにも聞いて欲しいんだけど、

最近・・・蔵馬、変なの。」




「変て、どんなふうに?」



静流さんが不思議そうに聞いてきた。



「蔵馬じゃないみたいに、なったの、急に。」


時々言葉を詰まらせながら、言葉を選びながら話す思惟のことを珍しいなと感じながら、全員耳を傾ける。


3人とも、?って顔してる。
そうだよね、わかんないよね。



「具体的に言うと・・私のこと忘れてるの。」



「はああ!?なんだそりゃ!

思惟ちゃんのこと忘れたって・・どう言うことだ?」




「私の存在自体、わからないみたいで。
会いに行っても・・誰だ?っていうの。

それに一人暮らし始めたのも、実家と距離を取るためみたいで、
お母様も様子が変だって気づいているみたいなの。」



私はきっと何かの魔界の薬草とかのせいじゃないかと、色々調べていたんだけど、何も見つからなくて一人で抱え込めなくなって、ついにみんなに相談をした。



その瞬間、桑原くんは行動が早い。


「おい蔵馬!おめえ、思惟ちゃんのこと忘れたってどう言うことだ!!」




桑原くん、早速電話してる。


『・・・・・なんです?桑原くん。用がないなら切りますよ。
今取り込み中ですから・・

・・・・・っ・・・・・・


・・・・・・・・・・』






みんなが固唾を飲んで桑原くんを眺めているが、一言も発せず携帯電話を閉じた。


「なんだよカズ!
蔵馬くんなんだって・・・!?」


「あ・・いや・・・その〜〜」





何かあったのかな、桑原くんがこんな反応って。
よほど酷いこと言われたとか・・?









それから静流さん提案で幽助くんも呼んで、蔵馬の新居へ乗り込むことになったんだけど、桑原くんがどうも、気が進まない様子で今日はやめようかなんて、後ろ向き。



私は・・・嫌な感じもするけど・・・
まずは相談だけでよかったんだけどな・・。


やっぱりまずは躯さんとかに、魔界の魔法みたいなのじゃないか聞けばよかった。









蔵馬の家を案内する間、やっぱり桑原くんの様子がおかしい。




「何かあった?蔵馬に電話した時?
ごめんね、私が変な相談しちゃったから。」



「いや・・・だ、大丈夫だけどさあ、
あの思惟ちゃん、家帰ってたらどうかな。
俺たちだけで行ってくるから、男だけで!」




桑原くんが、幽助くんと二人で行くってこと?
もしかして女子たちがいると、言い合いになったりした時困るとか??


「ばーーか!桑原、思惟いねえと家わかんねーだろうが!」


幽助くんがそういうと、ついて来ていた静流さんが桑原くんを呼んで二人で話をしている・・・。




マンションについて、私は静流さんたちと近くで待ち、まずは男子組で話を聞いてくれるということになった。











「おい桑原、お前のさっきの煮え切らない態度、なんなんだよ!思惟ちゃん心配してんだろーがよ!」


「いや、それが・・・
電話の先から・・・」


相変わらず変な様子の桑原。
幽助は思いっきり蹴りを入れてはっきり言えと喝。


「はあ!?
女の声がした?それも・・・あ、喘ぎ声ぇ!?」


「声でけーわ!!」


「いや、そんなわけないだろがよ!
蔵馬に限って、思惟って彼女いるんだしよ!」



「・・思惟ちゃんのこと忘れてるって言ってんだ。でも俺が電話した時はな、桑原って俺の名前は言ったんだよな。」


「はあ?どう言うことだよ。思惟ちゃんのことだけ忘れたってことか?

まあついたから・・・とりあえず、踏み込むぞ!」





幽助は、蔵馬の部屋だというマンションの玄関ドアを思いっきり開けた。

鍵しまっていても壊す勢いだったが、鍵はかかっておらず、
すんなり開いてしまったものだから、二人とも顔を見合わせて驚いたが、靴を脱いで入ると・・・





「・・・お、おい浦飯・・・」



      『・・・・ん・・・・・・・ああぁ・・・



「マジか・・・」



      『んやっ・・あ・・はあっあああっ・あっん・・



「おい、蔵馬!入るぜ!!」



「う浦飯〜〜!!」



綺麗に片付いている一人暮らし用のマンションの奥の部屋から、
うっとりするほどいやらしい、女の声がして、
それはもう、真っ最中だった。



「おめえ、何してんだよ!!」



女は、その直前に果てた様子で、気を失っていた。
暗くした部屋が、いっそうその艶かしさを際立たせていて、
綺麗な裸体の蔵馬が、幽助と桑原の方をゆっくり振り向く。

友人である自分たちに向けて、この表情は初めてだ。



「・・なんです?こんなところに無断で入ってきて。」



「ってお前!その女は誰だよ!!思惟はどうした」




蔵馬は下だけ履くと、女に目も暮れず二人の前に立った。
冷酷な、妖狐・蔵馬の時のような表情で、
あの優しい秀一である蔵馬の様子とは別人だ。



「・・・さっきからなんなんです。
思惟なんて女は知りませんよ。

もう少し楽しみたいところなんで、帰ってくれませんか?」




言葉こそ南野秀一であるが、その表情も声にも、全く感情はない。




「本当に思惟のこと忘れちまったのかよ!」


「・・知りませんね。
ああ、もしかしてこの間俺を訪ねてきた女の子ですか?

しつこかったんで、抱いて欲しいのかと無理やりキスしたら、帰っていきましたよ。」




あっさり言って退けた瞬間、幽助が蔵馬を殴っていた。
気持ち的には桑原も同じ気持ちだったが、一瞬幽助の方が早かっただけだ。




幽助は蔵馬の首をつかみ、叫んだ。



「てめえ、また思惟のことを泣かせたのか!!
黄泉の国の時のこと忘れて、今度はてめえがっ」




幽助の掴む手首を掴み取ると、首をさすりながら蔵馬は薄ら笑った。




「俺は、来るものは拒みませんが面倒臭い女はお断りです。
あの女にもそう伝えて、もう来ないように言ってください。」





そういうと、蔵馬は俺たちを玄関に追い出そうとした。
振り返ると、そこに思惟ちゃんがいて、一部始終を聞いていたようだった。


「「思惟!」」


「ご・・ごめ・・




冷たい目で見ていた蔵馬は、まるで彼女の存在を無視するかのように、部屋へ戻っていった。
俺たちが出た後に鍵まで閉めて。




「うあ・・その悪い。思惟・・嫌なとこ見せちまったな。」


「う・・・」



「ほ、ほら、泣けって!」


幽助は胸を貸すつもりでいたのだろうが、思惟は恵子ちゃんに遠慮してか、幽助の胸は借りなかった。

ポロポロと泣いていた。
あんなに、仲の良かった二人なのに、なんで・・
皆の心がその一心だった。




全員は、何があったのかわからないが、蔵馬が蔵馬じゃないことで一致。
何かの作用によって
思惟のことだけを忘れてしまっていること、

それから、これはコエンマや躯や黄泉など魔界の妖怪たちにもそんな症状があるか聞いてみる事にした。
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