サクラサクラ
□7、修学の古代林
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7、修学の古代林
元の世界に無事戻れたことはある意味、奇跡とも思えた。
戻れないことも覚悟して行った過去の世界。
戻ってきたときに、宝具である鏡は割れてしまったから、
もう二度と過去へな行けないだろう。
私が、戻ってきて到着した場所は、家の近くの公園だった。
何度も蔵馬と一緒に登下校した道。
私は、すぐに家に戻って着替えると、すぐに部屋を片付けた。
帰って来られないことも考えていたから、私はある程度荷物を整理していたのも良かったと思う。
必要なことは、全部紙に書き出し、机に置いておいて。
それから、
花弁を教えてもらった通りに煎じた。
甘くて、いい香り。
冷まして水筒に入れると、私は蔵馬が独り暮らしをしているマンションへ向かった。
夕方になれば、きっと仕事から帰ってくる。
あの妖怪の女の人が居ない時がいいけれど、
きっと家にはいるんだろうな。
私は、まるでストーカーみたいだなあなんて思いながら、マンションの前で様子を伺った。
日が暮れて、マンションから、蔵馬の部屋から女性が出てきた。
頭から耳のようなものが出ているのが見える。
きっと、人間には見えないのだろうけど、妖怪だってすぐにわかる。
買い物かな。
その間に、目立つ赤い髪のスーツ姿のあの人が帰ってきた。
数ヶ月ぶりに見る蔵馬。
少し、大人っぽくなった?
懐かしく思えるほど、何年も会っていなかったよう。
私は高鳴る胸を落ち着かせながら、彼が階段を登って行くのの後をつけた。扉を開けたのを見計らって、後ろから声をかけた。
「蔵馬・・」
きっと気配でわかっていたのだと思う。
振り向くと、怪訝な顔をして何か言おうとしたが、私はそれを効く前に宝具を取り出し吹きかけた。
躯から借りた宝具の一つで、妖怪に幻を見せるものを吹きかけるもの。簡単なスプレーのような道具だ。
効果のない妖怪もいるとのことだが、蔵馬には効いたようだ。
ふらつく蔵馬と一緒に部屋に入り、
どんな夢を見ているのかわからないけど、寝室まで連れて行って座ってもらい、すぐに夢幻花を煎じたものが入っている水筒を取り出した。
「飲んで・・蔵馬」
虚ろな感じで、それを飲むと
眠り姫のように、蔵馬は倒れて眠りについた。
妖狐の話によると、おそらく3日3晩は眠り続けるはず。
蔵馬の寝顔は、以前を変わらず綺麗な肌で長い睫毛、綺麗な赤い髪が印象的。
スーツが似合っていて、きっと仕事も頑張っているんだろうなと思った。
本当は私の記憶が戻らなくてもいいから、おばさまや周りのみんなが安心してくれるだけでいいと思っていた。
私は、蔵馬の寝顔を見ながら、
呟いた。
『さようなら、蔵馬・・・』