おとしもの

□4.高校入学
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「「バレー部!初心者でも大歓迎〜!!」」




「「吹奏楽部でーす、今年は全国大会狙ってがんばってまーす!!」」







入学式翌日から、校門をくぐるといたるところで各部の勧誘を受ける。


ただ、音楽科は校舎が別棟なのでその波からはすぐに抜け出せるのが利点だ。


秀徳高校の学校自体は、結構レベルが高い。
有数の進学校でもあり、スポーツや部活もかなり有名なものが多いのだ。
特に強いのは、吹奏楽、卓球、バスケ次いでソフト、水泳。

音楽科にいると、部活って入れるのかな?



お従兄ちゃんが言うには、秀徳にも帝光バスケ部だったときのチームメイトがいるそうだ。
バスケ部は強いし、一度練習見てみたいな。








「ねえねえ!

 君1年生だよね。すっごいかわいいね。

 何部に入るの?もう決めちゃった?」





気さくに声をかけてきたのは、バスケットボールを持ったジャージ姿の背の高い男の子。
ちょっと茶色かかった髪の毛と、バスケット選手らしい大きな手、それから見上げるくらいの身長。
180センチくらいだろうか。



「あれ?音楽科?」


「はい、

 あの、音楽科の生徒は部活は加入できますか?」





きょとんとした表情で、一瞬黙ったまま止まっていたバスケ部の先輩だったけど、
にっこりと笑って、



「大丈夫!結構入ってる子多いよ。

 大概、吹奏楽とかだけどね。」




「そうですか。

一度、練習見に行ってもいいですか?」





今度は驚いたように、固まった。

なかなか表情がころころ変わるところが面白い。







「マジで!!
もっちろん。マネージャーも大・大・大募集中だからさ!!」



「ありがとうございます。」



会釈をしたら、ポケットからくしゃくしゃの紙切れを取り出して、はいっと渡された。




    第1体育館 16:00〜

    バスケ部 Aチーム見学会

  ☆やる気のある1年生、待ってます!











部活に入れるのかぁ。
でもピアノの練習、部活入ってできるかな・・

そう言いつつも、放課後の部活練習を見に行くのが楽しみで、わくわくしていた。
















〜〜〜☆〜〜〜☆〜〜〜☆〜〜〜









「気を付けーー!
 
 れーーーい!!」




「「「おねがいしまーーーす!!」」」





放課後の部活のスタートは、挨拶から。
ここはかなりそういう礼儀を重んじる学校みたい。

3年生を先頭に、40人近くいる部員全員が並んで挨拶をした。
今日見学に来ている1年生は、15人くらい。
そのうち女子は私だけ。


ちょっとだけ寂しいかも、なんて思いつつも久しぶりの体育館と、バスケットボールを突くダンダンダンという音が懐かしくて、つい顔が綻んでしまった。




「きみ、来てくれたんだね!

 なんだか楽しそうだけど、バスケ好きなの?」




「はい、お邪魔にならないよう気を付けて見てます。」




「ボール、結構飛んでくるから気を付けてよ。」





今朝声をかけてくれた先輩は、どうやら2年生のようだ。





「おーい、そこの女子の見学の子ー。

 ちょっとこっちきて、笛吹いてくれる?」




「はいっ・・!」




呼ばれていくと、かなり背の高い眼鏡をかけた先輩と人懐っこい先輩が、後輩を指導しながら手招きした。







「はい、えーと、名前は?」



「七原小羽です。」





「七原ちゃんね。
 中学ん時は、何やってたの?」


「2年の後半から、バスケ部のマネージャーを・・。」



「え!?マジぃ!!
 すごいじゃん、マネ経験者発見〜!!

 うち女子マネいままで居なかったんだよね。
でも今年は、監督も忙しいからマネ欲しいって言いだしてさ!
募集してんだけど、どう!?」






「音楽科なので、どのくらい両立できるかちょっと心配で・・。」




「大丈夫大丈夫!

 俺なんかさー、今年からシンチャンと理系の進学コースに入っちゃってさ、

もう勉強大変で大変で!

でもまあ、なんとかやってるからさ。」





秀徳の理系の進学コースといえば、中には医大とか行くくらいの生徒がいるクラスだ。
バスケ強豪なのに、勉強もできるなんて。
すごいなぁ・・・。





「ね、シンチャン!」


「高尾・・いちいちうるさいのだよ。

 とりあえず、練習に入るぞ。


笛を頼む。」






「は、はい!」







やっぱり、楽しい!

バスケ、いいなあ。
掛け声とか気持ちいいくらい大きな声で、高校のバスケ、すごいなあ。



マネは無理だろうなあなんて、思っていたのに、
今ではやりたくてやりたくてしょうがなくなっている。


だめだなあ、音楽で頑張るって決めてたのに。






 


人懐こい先輩は、胸のネームにTAKAOって名前が入ってる。

みんなネーム入りの練習着だ。名前が覚えやすそう。
 




あードリンクそろそろ出すころなのに。

マネいないからか、タイミングが・・。


あぁもう職業病だよね。












結局、秀徳高校のバスケ部マネージャーになることにした。



黄瀬さんには、きっと怒られるかなー。
会えなくなるって、言われそう。

あ、でも今度は試合で会えるかもしれないし。



お従兄ちゃんとも試合で会えるかも。
ちょっとわくわくするかも💛
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