おとしもの
□5.夏・合宿!
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🌸合宿の終わり
明日で長かった合宿も終わり。
疲れも出てるし、そろそろ家に帰りたいと思い始めていた。
家のお風呂に入りたい。
で、お気に入りのパジャマを着て自分のベットで寝たい。。。
ありきたりな普通の女の子のささやかな願望だと思う。
で、嫌がらせを受け続けたこの合宿だったが、3日ほど前からパタリと他校の先輩女子マネからの嫌がらせが止んだ。
マネの仕事上の話はするが、それ以外は避けるように近くへ来なくなり、練習中はほとんど接触はなくなった。
何かあったのだろうか。
「七原。
すまないが、桃井と一緒に買いだしに行ってくれないか。」
コーチの一人に呼び止められたので、さつきさんを探して買い出しに向かった。
「小羽ちゃん♡
ちょっと重いもの買うから、手伝ってね?」
「はい、どこまで行くんですか?」
「ふもとのスーパーだよ。松田コーチが車も出してくれるって。」
〜〜🐤〜〜🐤〜〜🐤〜〜
「す、スイカですか・・。」
「そう、今日は午後から海水浴だよ〜♡」
「あ・・そのための水着・・。」
「そうそう、いつ行くんだろうとは思っていたんだけど、最終日だったね〜」
合宿の最後は、海水浴とスイカを買って冷やして、バーベキューをしようって事らしい。
さつきさんは、ナイスバディだからいいけど、
私は人前で水着なんて来たことないし、さらしたことないし、
あ、パーカーとか着ていればいいか。
「ねえ、小羽ちゃん。
わたしずっとデータ取集とかしてて、小羽ちゃんが嫌がらせとか受けてるの気付いてあげれなくてごめんね。」
さつきさんが不意に申し訳なさそうに、誤ってきた。さつきさんは全然悪くないし、むしろ心配かけたくなかったから気付かせないようにしていたのに。
「みどりんがね、教えてくれたの。あと赤司君も。」
先輩マネたちの態度が変わったのは、真太郎先輩か赤司さんが注意したのだろうか。
どちらにせよ、大事な合宿中に余計なことで心配させてしまって申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「小羽ちゃんのせいじゃないんだから。
心配しなくていいよ?
テツくんだって心配してたし。」
「ありがとうございます。」
ほんとに兄の友人たちは、みんな優しい。
「さて、買い出しおわりっと!」
「じゃあ私たちも準備しますか?」
「そうだね♪
買い物した食材は冷蔵庫に入れたし、スイカは向こうへもっていくからこっちの荷物っと・・。
じゃあ小羽ちゃん、準備しに行こうか。きーちゃんドキドキさせないとね💛」
それはできれば避けたい・・・
なんか嫌な予感しかしない。
「おまたせッス〜〜!!」
来週モデルの撮影あるから、日焼けまずいんスよねーなんて、日焼け止めを塗っている。
その横で紫原は、お菓子を袋いっぱい持ってきたのをさっそく開けている。
「ところで女性陣はまだッスか?【俺の彼女の
小羽っち】の水着姿は初めて見るんスよ🎵」
「そこちょいちょい強調するよね・・黄瀬ちん。むかつく。」
紫原がムッとすると、黄瀬は気にせず小羽の姿を探している。
そこへ横で聞いていた黒子が、かき氷をつつきながら追いうちをかけるように言った。
「桃井さんもスタイルいいですけど、小羽はスタイルいいですよ。おそらく青峰くん好みです。」
「「「え・・。」」」
「マジか・・。」
「いや、ちょっと気づいてたッス。
細いんだけど、あるとこはあるっていうか・・。」
ちょっとだけ顔を赤らめて黄瀬が思い出しニヤケをしている。
それを見て黒子がちょっとムッとしている。
「あ、来ましたよ。」
黒子が手招きをして、コーチとマネージャーたちを呼んだ。
クーラーボックスやらスイカやらを持った、マネージャーたちとコーチが手を振りながらやってきた。
「おーい、場所取りしといたかー?」
「「ここッスよーー」」
他校の選手たちが、桃井に必要に付きまとっている。そりゃそうだ。
あの水着スタイルをみたら、誰だって声をかけたくなるだろう。
ほかのマネたちもいつものジャージ姿ではなくて、とても新鮮にみえる。
「うわー・・はねちんが・・」
紫原が、まいう棒を砂の上に落とした。
「え、なになに!?みんな邪魔で見えないッスよ〜!」
一瞬、そばにいた全員の目が、釘付けになった・・ような・・。
「ちょ、やばいッス・・。」
黄瀬が慌てて小羽のところへ駆け寄っていった。
小羽の恰好は、桃井に比べたら大胆ではないが、
さすがに水着だ。
真っ白な肌に、薄いピンク色の水着が妙に似合っていて、
可愛い。
もともと学校でも話題になるほど可愛いが、こういうところで見ると、益々・・。
「エロ可愛い・・だな。
テツヤ、お前の妹すげえな。グラビアでデビューできんぞ。」
「やめてください、青峰君。
小羽は青峰君のような人たちに見せびらかすようなことはしませんよ。」
「おーいシンチャン。
固まってるけど大丈夫?」
不思議と青峰のような奴をどうにかしないとと思ってしまった。
他の選手たちも、小羽を見て騒いでいるのだよ・・。
「高尾・・小羽に、上着を脱ぐなと言っておいてくれ・・。」
「なんで、自分で言えばいいじゃん。」
「なんとなく話しかけづらいのだよ・・」
高尾が顔を覗き込んできたが、自分でもわかっている。顔が、顔が赤くなっているのだろう。
笑われても仕方がないが、凝視できない。
「小羽っちー!!」
「黄瀬さん。」
小羽が持っている荷物を引き取ると、一旦地面に置いて、黄瀬はすぐに小羽のパーカーの前チャックを閉じた。
「ダメっすよ。
小羽っち、可愛すぎ。
俺だって初めて見たのに、みんなに見せるの禁止ッス。」
そういいつつも、
いつも女子にあんなに囲まれてて慣れているはずの黄瀬が、少しだけ赤面しているように見える。
ちゃんと彼女の手を引いて、ほかの学校の選手たちから引き離したのには誉めてやろう。
ほかの選手たちを興味本位に近づけるのは、キセキの全員がなぜか不愉快に感じていた。
「あーーカレシ面むかつくわ、黄瀬ちん。ねーみどちん。」
「ふん、一応あいつが彼氏なのだよ。今は。」
「へー、緑間も宣戦布告か!?」
「青峰くん、気が付かなかったんですか?」
「黒子、煩いのだよ。」
「ていうか―、赤ちんもかなり気に入ってるよねー・・。」
「「そうなんですか(なのか)?」」
何人かの声がシンクロしてるのか、それとも黒子と青峰だけなのか・・
紫原は、のんびりしているようだけどなかなか鋭いことを言う時がある。
「ん〜まあ、さっちんとはちょっと違うけど、面倒見が良いっていうか、赤ちんにしては親切っていうか・・。」
「確かに、表面的なやさしさだけじゃないって感じする。」
桃井が急に話に入ってきた。
相変わらず黒子にべったりとくっついている。
「おい、あいつら邪魔してやろうぜ!」
にやりと笑った青峰が、黄瀬と小羽のいるところへ向かっていったのに続いて、紫原と黒子と桃井も続いた。
夏の終わりの、意外と風の爽やかな一日だった。