おとしもの

□6.秋風
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あれから、あまり思い起こさないように、
でもちゃんと向き合えるように、

何がどうすればいいのかと
模索するような日々が続いて、
2か月が経った。


もう季節は秋の終わりで、


真太郎先輩と和成先輩は受験生。
二人ともバスケをやりたいとウインターカップを目指しているが、模試や受験勉強のために練習を休むことも多かった。


成績の良い緑間先輩は、なんと医大を受験するそうだ。


和成先輩は、理系大学。
はっきりは教えてくれないけど。


二人とも、すごい。







最近は、従兄のテツヤおにいちゃんともゆっくり話すことが少ない。

お兄ちゃんも大学受験のため勉強中。おそらく文系の学科へ進むのだろうけど、きっとバスケもやるんだろうな。
桃井さんは今度こそ、お兄ちゃんと一緒の大学へ入るんだそう。

火神さんは、バスケをやるためにアメリカへ行くのだという。向こうの大学から声がかかっているそうだし、青峰さんもバスケで進学予定だとか






私はといえば、相変わらずのマネージャー業が大変で、ピアノもそこそこに京都で演奏する準備もしつつ、立派に高校生。

といった状態。












最近は、せいくんともあまりメールをしていない。

りょうくんと別れてから、なんとなく誰とも連絡を取る気分になれなくて、しばらくメールをしていなかったのだけれど、



どうしてるかな・・って気になりはじめた頃、


不意にあちらから連絡が来た。


しかも・・















♪♬🎶♬〜♪♬♬♩〜



(誰だろ?登録ない番号だけど・・。)





「はい・・もしもし。」





「こんばんは。小羽かい?」




「??

・・・えっと・・」




「あぁ、そうか。
これでは誰だかわからないね。

君とずっとメールをしていた相手、といえばわかるかな?」





「え・・・、

せ、せいくん・・?」





「久しぶり、といったほうが正しいね。
携帯を拾った時に一度だけ、電話で話したことがあったからね。」




「ほんとに・・?

せいくんなの?」




「俺を嘘付きにしたいのかい?
これでも勇気を出して電話したんだけれどね。」




あまりにもびっくりして、どの言葉を口から出せばいいか、わからなかった。

ずっと会いたくて、話したくて
そう思っていた相手が、突然電話をかけてくれたのだから。





「あ、あの。

あの時は、ありがとうございましたっ
携帯を拾ってくれたとき・・」





「小羽、最近はメールをくれないね。」




「あ・・ご、ごめんなさい。

いろいろあって、なんか、疲れてっていうか
話す気になれなくて。

せいくんには、ちゃんと話そうと思っていたんだけど・・。」






なんとなく、言い訳がましいかもと後悔したけど、でもせいくんならきっと解ってくれる。






「彼氏と、別れたんだろう?」



「えっ・・なんでわかるの?」





「小羽がこんなにも落ち込む理由は、それしかないだろう?」




やっぱりお見通しだ。

それにちゃんと解ってくれてた。





「私から別れるって言ったのに、ちゃんと自分でも気持ちの整理してから別れたはずなのに・・、

居なくなったら少しだけ淋しさもあって、

やっぱり私って、我儘だなぁなんて思って。」




「自己嫌悪してるのかい?
小羽らしいね。

気にすることはないさ。

ただ、この2年いつも来ていたメールが急に少なくなると、俺のほうもすこし寂しい気がするのだけれどね。」





「あ、ごめんなさい。
あ、あの・・

今度私からも電話していいですか?
メールじゃなくて、電話で話したいとき。」




なんか、涙が出そうになった。

電話の声が、遠い記憶のなかの声よりも優しくて、大人っぽくて、




「いいよ。
掛けておいで。
メールも時々は見てくれるかい?」




「え・・・?

あ、まさかわたしっ」




ずいぶん前から読んでない。
というか、いつ送ってくれてたんだろう・・。





せいくんにお礼を言って、それから電話を終えると

まだドキドキする鼓動を抑えながらLI○Eを開いた。





やってしまった・・

ぜんぜん既読してない。
というか、通知を見てなかった。




いっぱい来てる。もうかれこれ2週間も見てないようだった。








          小羽
元気にしているかい?


          最近メールが
          ないようだが・・
          忙しいかな?


          今日はプロバスケの
          観戦に行ってきた




          ピアノはちゃんと
          やっているかい?




          少し、紅葉がはじまった
          俺の家のモミジが
          とてもきれいだよ。



          




こんなに、こんなにもたくさん。
そして心配してくれて、電話してくれたんだ。





あー・・真太郎先輩からも、3日も前に・



    

          不本意だが・・
          黄瀬から伝言なのだよ




          俺は大丈夫だから
          自分を責めて
          落ち込まないで
          くださいッスね!

          小羽っちのこと
          これからもずっと
          応援してる。

          小羽っちの
          ファン第1号より






わざわざ、真太郎先輩を経由してくるあたり、
やっぱりりょうくんは気を使っているんだ。
ほんとに、私には勿体ない彼氏だったと思う。




初めて付き合った人が、

りょうくんで本当によかった。






心配してくれるりょうくんや、
真太郎先輩、和成先輩、

せいくんにこれ以上心配かけないように



がんばるから。






 
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