おとしもの

□10.赤いあの人と
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🐠何度目の・・






せいくんが、東京の大学へ通うようになってからもう8か月が経とうとしている。

もうすぐせいくんの誕生日だから、プレゼントを用意したいのだけれど、何がいいのか困っていた。


ー・・というのも、せいくんのうちがすごくお金持ちらしいというのを、最近知ったばかりだった。
今思えば、とても食べ方が上品なところとか、言葉遣いもきちんとしているところ、あとは先月の私の誕生日には、なんか見たことのない赤い色の宝石の付いたネックレスをプレゼントしてくれた。

その辺のデパートとかで売ってる、高校生とかでも買えるような安い感じではないというのは、ジュエリーに詳しくない私でもわかる程だ。

それに、趣味は乗馬だというではないか。
普通の人、それも大学生が乗馬を趣味にする?たしか乗馬って、鞍を自前で持ってたりとか結構お金がかかるって聞いたことがある。



実際、家に行ったわけでもないけれど、どんな家なのか見るのもコワイ・・。

漫画に出てくるような、豪邸だったらどうしよう。













せいくんの誕生日は12月20日。

去年はメールでお祝いして、
一昨年は、過ぎた後に教えてもらった。


今年こそは、ちゃんとお祝いしたい!






でも、最近は部活が終わった後、会いに行くのを躊躇する。




せいくんの大学はそう遠くなくて、電車で3駅ほどのところにある。
駅のすぐ前に大学があるし、駅も家に帰る方向なので途中で寄り道するだけ。

でも、大学の中には入りづらいので正門で待つことが多いのだけれど、少し困ったことがある。






女子大生たちの視線だ。









黄瀬さんと一緒にいた頃も、そういうのはあったけれど、相手が女子大生だからか少し雰囲気が違う。



でも、嫌な事は嫌と断らなければならない。

せいくんと別れて・・とか、せいくんの電話番号を教えて欲しいとか、酷い時にはどこかへ連れて行こうとさえする時がある。

連れていかれたら、無事に帰れないような気がするし、せいくんには大学の生活を楽しんでもらいたい。
私のせいで、つまらない心配はさせたくない。




待ち合わせの場所を変えようか・・
そんなことを考えているうちに、今日も大学の門の方へ歩いて行ったあたりで、大人っぽい女性に話しかけられた。



「あなた、七原小羽さん?」



「はい・・。」



「ちょっとお話があるんだけど、いいかしら。」




綺麗な女性は、大学生っぽいけどお洒落で派手な服装で、巻髪で背が高くてきれいな人だった。




「えっ・・と。
あの、待ち合わせをしているんです。」



「征十郎でしょ?
まだまだ来ないわよ。部活まだやってたから。
私、さっきまで見ていたのよ。」





征十郎、と呼んだその大学生らしい女性は、長くきれいに巻いた髪を払った。



「彼の追っかけなんですって?
あなた、可愛いけどー、彼にとっては遊び相手よ?」



「え・・・」



よくある嫌がらせだ、なんて思った。
大人の女性が相手だし、そういうことを今までも言われたことがない訳ではなかった。
だから、割と平気だった。
ここまでは・・・






「征十郎とはどこまでいってるの?」


「へ?」




唐突に聞かれた問いが、あまりに直球でつい変な声が出てしまった。
どこまでいってるって・・・
どこまでって・・・


そういう意味だよね・・?




「もうエッチはしたのかしら?」


「//////////////っえ・・えっ・・」




顔に火が付くとは、こういう場面でもあるのかと、もちろん後からだが思い知らされた。





「そそ、そんなこと・・なんで・・?」





「うふふふっ
まだなのね。可愛いわね、純粋な高校生は。

今時の高校生は、高2までにほとんど済ませているって聞くけど、そうでもないのね。
それともあなたが遅い方なのかしら。」



「そ・・そういう話なら、もう失礼します・・」





なんとなく、クラクラとした。

そんなことないこともないかも。
たしかに、凪沙はいま付き合っている彼氏と、もう初体験は済ませたそうだし・・
クラスの女の子でもそういう話をしている子がいた。


あれ?


もしかして、せいくんとしてないのが

遅いってこと?









「・・征十郎は、とっくに済ませているわよ。」




背中を向けて、この初対面で下ネタを話す女性から逃げようとしたとき、頭の上からそんな声が降ってきた。

周りに何もなくて、エコーがかかったみたいに聞こえたのは、気のせいだろうか。










「あなたに、何もしていないってことはー・・
あなたは、妹みたいなものなのかしら?


その様子じゃあ、キスもまだだったりして。

まあ、征十郎は大学でも話題の人だから、あなたにもそろそろ飽きてくるころでしょうよ。傷つく前に、高校生は高校の中へ戻った方がいいわよ。


私は、波多野芽衣子。
征十郎の許嫁みたいなものよ。」



「い、・・許嫁・・?」



「そう、そういうこと征十郎は言わないわよね。征十郎はそういう人だから。」





そんな話は、一度も聞いたことない。




せいくんは・・

そんなことを黙っていて、付き合うようないい加減な人じゃない。

だけど、


だけど・・




「あら、こんな時間。
じゃあ、七原さんさようなら。私はここの学生なの。征十郎にふさわしい学歴も必要だもの。
でもあなたは、只の高校生よ、もうここには来ないでね。」











こんな嫌がらせ、



今までだって・・・



たくさん



あったよ?






なのに、胸が苦しいのは、



どうしてだろう。
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