サクラサクラ


□3、流れる雲
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思惟視点



(なぜいつも捕まってしまうんだろ・・。)


とてつもない自己嫌悪に苛まれながら、与えられた椅子に座ってうなだれていた。
この間と一緒。
戸愚呂たちに連れて行かれて、みんなに迷惑をかけてしまったときと同じように、何もできないままだ。


「気分でも悪いのかい?
ここは暑いからね。慣れないと女の子にはちょっと辛いかもしれないね。」


少し顔を上げて、海藤のほうを見ると余裕そうに笑んでいる。
本当に暑い。でも、制服の上着を脱ごうという気にもなれなかった。



「さて、そろそろ奴らがやってくるかもしれないから、準備をするか。
柳沢!」

「ああ。」


そういうと、柳沢と呼ばれた男は奥の扉を順に閉めて鍵をかけていった。


「相田さん、のど乾いただろ。
水あったかな?」

海藤は冷蔵庫から、ペットボトルの水を出して思惟の前に置いた。
のどは乾いていたが、それを飲もうという気にはなれない。


「別に毒なんて入ってないよ。心配せずに飲みなよ。」


「何故こんなことをしているの?
蔵馬や飛影に何をするの?」


汗を拭って、海藤に向かって真っすぐ向き直って聞いた。



「彼らだけじゃないよ。浦飯ももう2階にいるし、桑原ってのも来る。
君には関係ないが、南野はともかく、飛影ってやつは君が人質になっていたほうが、参加しれくれると思ったんでね。」


「幽助くんが・・?
捕まっているの?」


「ああ、城戸にあっさりとね。」



海藤は笑いながら答えたが、思惟は笑えなかった。暗黒武術界で優勝したほどの力の持ち主が、そう簡単に捕まるわけがない。


「幽助君が、あなたたちに捕まるわけない。
なにか特別な能力を使ったのね。」


この館にはいった時から、なんだかこの男たちの様子に違和感を感じていた。
戦うというより、試すとか能力を誇示したいとかそんなことが目的のように見える。



「あんた、意外と鋭いね。
面倒だから、少し眠っててもらうよ。」



そういうと海藤は、座っていた椅子から立ち上がり、ポケットから何かを取り出した。


危険を感じ、イスから立ち上がった瞬間、すでに後ろには柳沢という男がいて、両腕を抑えられ、身動きを封じられた。

海藤はにやりと笑うと、後頭部に手を充て、無理やり顔が天井を向くように引っ張った。
両腕を強く引っ張られ、力が入らない。


もう片方の手で、海藤は思惟の唇に触れた。


「やっ・・!!」



頭を振ろうとしたが、がっちり腕で抱えられ、動かすこともできない。

唇に触れた指で、そっと唇を開かせると、そこへ薬の粒のようなものを入れた。

そのままペットボトルの水を一気に口内へ流し込められ、その薬とともに飲み込んでしまった。





徐々に頭が重くなり、そのまま、床に伏した。
頭が、ぼーっとする・・・。

蔵馬、
また迷惑かけてしまうのかな。




蔵馬・・ごめんね・・・。








それから30分ほどして、蔵馬たちが到着することになる。
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