おとしもの

□1.紫のスマホ
1ページ/7ページ

今日は意外と暖かい。


ぽかぽかとお日様からの熱を、頭に感じながら、目の前に広がる大きな屋根を目指して、長い階段を登る。


今日は従兄妹のバスケットの試合がある。




ハア、ハア・・


流石に前の学校でクラブはやっていたものの、3ヶ月ほど休んでいるから体が辛い。

短い丈のコートの中は、寒くないようにと厚着をしたせいかじんわりと背中が汗ばんでいるように思える。



「やっと、到着〜・・・ふう・・」



息を整えながら、大きなアリーナの中からものすごい歓声が聞こえたものだから、もう試合が始まっているのではないかと気が糶る。






受付のおじさんに、いまどこの試合ですか?と尋ねると、そこのボードに書いてあるよと教えてくれた。


何度か従兄妹の試合を見にには来たことがあったが、ひとりで来たのははじめてだ。

入口はどこかとキョロキョロしていると、通路の先にあるドアの開いたところからまたもや凄まじい歓声が聞こえた。





きっと、すごい盛り上がってる試合なんだ・・。




どことどこの試合なのかも、確かめずに入口に急いだ。

一歩その仕切りをまたいだ瞬間・・





目の前に広がる、広い広い体育館には、観客もいっぱいで、


立ち見も凄くて、




ーーーーワアアァァァア!!!ーーーー





バスケットのウインターカップ

試合は1回戦、



誠凛高校と桐皇高校の試合が
行われていた。






だけど、すごい。

私にだってわかる。

すごい試合だってこと・・





お従兄ちゃん・・やった!

試合にでてる!





みんな流石に高校生だしバスケットプレイヤー、すごく大きい。



転校する前の学校のバスケ部なんて、県ではかなり強かった方だったけれど、

こんなにすごいプレイが高校生なんだ。
高校生の全国大会ってすごい・・!








☆.+゜*。:゜+。+゜*。☆.+゜*。:゜+。+゜*。









結局、試合はお従兄ちゃんのいる誠凛高校が勝って・・・。


お兄ちゃん、泣いてた!



よかったねって思ったら、私も泣けてきちゃって・・





そのあと暫くしてから、忙しいから来るはずもないと思っていた、お従兄ちゃんからメールが来て、



   試合見に来てますか?

   どこにいるんですか 




嬉しくて、


   優勝おめでとう!!
   すごくかっこよかったよ。
   少ししたら帰ろうと思ってます。





   このあとみんなで
   ビデオみたりするから、
   帰っていてくださいね。

   帰りはくれぐれも気をつけて。



   

   わかったよ。
   おにいちゃんも気をつけてね(^-^)
   
   





  
そんなメールのやり取りをして、席を立った。




お手洗いに行って暖かいものでも飲んで、と席を立った。

ロビーには、帰りのお客さんがいっぱいいてトイレまでたどり着くのも大変なくらいだ。




なんとか用を終えて丁寧に洗った手を拭いて、それから大好きなホットの红茶を買って、会場へ戻ると、もう中は人がまばらだった。







「あ・・れ?」


コートのポケットにあるはずの重さがない。

   


ポケットの上から触ってみても、いつもあるはずの硬さがなければ、中に手を入れてみても探しているそれはなかった。

反対側のポケット、それからスカートのポケットやカバンも探してみるが、
どこにもない。



「携帯・・・」




落としてしまったのだろうか。



慌てて席を立つとさっき帰ってきた順に、自動販売機、それからお手洗いと何度も行ったり来たりして回ってみるが、
大切にしている、紫色のスマートフォンは見つからなかった。



「どうしよう・・・。」






もう30分以上は探し回っただろうか。

この体育館の受付に行って、拾った人が届けてくれたら連絡をくれるようにお願いしよう。



だって、あの携帯は、


とても大切なものだから。





どんなに古くなったって、絶対に機種変更なんてしない。壊れないように大切に、大切に使い続ける。
そう願っているモノなのに・・


こんなにも簡単に無くしてしまうなんて





じわじわと涙が出てきた。

溢れるのを我慢しながら、体育館の外にでて公衆電話を探した。


まずは一度、電話をしてみよう。



探す程でもなく、入口のすぐ横に公衆電話があったので、自身の携帯番号をプッシュした。






ルルルルル・・・



ルルルルル・・・



ルルルルル・

・・・っ「もしもし」




でた!?


「あ、もしもし・・・、

あの・・」





「ああ、勝手に出てしまってすみません。」


「あ、あの、私の携帯です、落としてしまって。」


拾ってくれたであろうその電話の向こうの人は、若そうな男の人だった。




「ロビーで拾ったんですが、いま受付に届けようと体育館の事務所まできたところで
着信が鳴ったから、取ってしまいました。」




「い、いえ。ありがとうございます。探していたんです。」



丁寧な話し方の拾い主さんは、
このあとすぐに行かなければいけないから、
体育館事務所に携帯をあずけておいてくれると言って、通話を終了した。







体育館の事務室の扉を叩く。


「すみません、」





「携帯の子かな?」


優しそうな白髪交じりの髪のおじさんが窓口から顔を出した。おじさんというよりは、おじいさんに近い。




「あの・・携帯を、預かって頂いています七原といいます。

こちらに・・届いていますでしょうか。」



不安そうな私をみて、おじさんは笑って答えてくれた。



「ああ、ああ、届いてるよ。」







「よかった〜!」

「紫色のスマートフォンで、星の飾りがついてます・・・!」




「・・!それです・・、よかったぁ。」



おじさんは事務机の上に保管してあった、紫色の星の飾りが揺れる携帯を持ってくると、
よかったねといって、優しく手渡ししてくれた。



ほっとして涙がでてきた。
ほんとうによかった・・。
もう絶対になくしたりしないよ。大切な大切なわたしの携帯・・。









「じゃあ念のため、ここに連絡先と名前をかいておいてくれるかね。」


おじさんが差し出したノートに、名前と携帯番号を書いたら、その欄の手前に電話番号が書いてあった。


【拾い主】080-****-****








「あの、この拾い主って言うところの電話番号って、携帯を拾ってくださった方ですか?」



「そうだよ。

念の為に聞いておいたんだけど、届けてくれて本当によかったね。」




そういえば、さっき直接話をしたのに、用件だけをお話して電話を切ってしまった。
拾い主さんは用があると言って急いでいたみたいだし。




お礼ぜんぜん言ってないかも・・・






「お礼って、言えますか?」


どうしてもお礼を言わないと、と咄嗟にでた言葉だった。





「ああ、じゃあいま、電話してみようか。」



そう言っておじさんは、事務室の電話の受話器を上げた。
しばらく耳に当てていたが、




「でないねえ・・、

携帯わたせたこと伝えるから、また電話しとくよ。

一応個人情報だから、勝手に連絡先を教えることできないから、
お礼が言いたいってことも伝えておくからね。」




親切な受付のおじさんに丁寧にお礼を言って、それから、また試合を見に来た時に来る旨も伝えてその場をあとにした。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ


©フォレストページ