おとしもの

□1.紫のスマホ
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☆.☆.。.:*・゜



「おい、あの子可愛くね?」

「どこどこ?」


「ほら、あっちに座ってる赤いコートの子!」



「うわ・・マジやば。
 超カワイイじゃん。どこの応援に来てんだろ。」








ジャージ姿の試合後の部員たちが、通りすがりに目に止めたのは、







赤いコートに肩までのサラリとした内巻きの栗毛。

そして、ふわっとしたスカートからはみ出た、髪の毛と同じ色のブーツ。


服から出た肌は、どこも真っ白で、



まるで絵本から出てきたかのような

少女だった。















「ねね、日向。あの子、すっごい可愛くない?」




「あ?

どれだよ。」



「ほら、あの窓の近くに座ってる子!」


「コガ、あっち向いてて顔見えねえだろうがよ。」



あまり興味無さそうに、日向が返事を返した。





試合後のざわついたロビーで、大会本部へ打ち合せに行った、顧問と監督のリコを待っているところだ。








「・・黒子、何やってんだ?」



「あぁ、火神くん。
 
 さっきから、応援に来ていた家族にメールを送っているんですが、返信がないんです。」





いつものひょうひょうとした様子で、携帯を眺めながら答えたのは黒子。




「家族?親でも観に来てたのか?」



「いえ、妹です。」




・・.・.。.  ・゜ 。





「「「いもうとおおおぉぉぉぉ〜!!!」」」







そこにいた全員が驚いていた。


妹の話なんて、黒子の口から一度も聞いたことはない。





「お前、妹がいたのか!?」


「そんなこといままで一言も言ってなかったよな・・・。」




みんなの視線が一点に集まる。
隠していたわけではないが、そんなに注目される程のことなのだろうか?





「いますよ。

はっきり言って、とても可愛いので

みなさんには会わせたくありません。」





はあぁぁぁぁ〜?!!









一点を注目していた全員が、何を言い出すのかと呆れた様子。




「黒子の妹って、やっぱ影薄かったりするんかな。」


「もしかして、突然いなくなったりとかしたりして。」


先輩たちが口々に黒子を弄った。






「それよか、可愛いから会わせたくないってどういうことだよッ!」

「とんだシスコンっぷりだな!!」

「ますます見たくなってきたな。」



散々突っ込まれるが、当の本人は気にしていない様子。

火神はそんな黒子の様子を珍しいな、と思いつつ、横で気持ち得意げな表情の友人を眺めていた。









そこに、少し離れた所からこちらを向いて立っている、一人の少女に気がついた。

さっきの赤いコートの女の子だ。



先ほどは後ろ姿だったが、こちらを見ているその容姿は、

目がぱっちりしていて線の細い、お人形がそのまま等身大になったかのようだ。






「小羽。」


「お従兄ちゃん。」



少女は、黒子を兄と呼んだ。




えぇぇぇぇぇええええ!!





「まじか!!」

「し、信じられん・・・!」

「似てないだろ、、、影薄くないしっ」

「カ、カワイイ・・天使・・。」




小羽は黒子のそばへ駆け寄ると、

おめでとう、といって笑った。




「ありがとう小羽。」





黒子は嬉しそうに笑った。



「ねえねえ、

 俺、誠凛高校の2年の古賀って言うんだけど、



 本当に黒子の妹なの?」




人懐っこい古賀先輩は、初対面の小羽に直接聞いてきた。
顔を覗き込むようにして。



「先輩、ちょっと顔が近いです。」



小羽を庇うように、黒子はその間へ入った。





「先輩、小羽が怖がっています。」



「いや、(怖がって)いないだろ・・。」





当の小羽は、にっこりと笑うとみんなに会釈をして挨拶をした。


「はじめまして、七原小羽です。」




「・・七原??」





「黒子の妹じゃないのかよ。」


火神が聞くと、2年生の先輩たちがおい、といって火神をつついた。




「火神、

親が違うとか、家庭の事情とか考えろよ。」




「あ、そか。

 わりぃ黒子。」





「いえ、そういうんじゃないんで。


 小羽は従兄妹なんです。」





なんてこと無いように答えた黒子は、さらに続けた。



「小羽はうちの母の妹にあたる叔母の子で、

3ヶ月ほど前から、事情があってうちで暮らしているんです。

母どうしが仲が良かったので、小さい頃からよく一緒にいましたし、ほぼ兄妹のような状態です。」






へえぇ〜!!




みんながとっても納得した。
だから似てないんだ・・。
で、天使なんだ。
影もふつうだ。






これが誠凛メンバーとの出会いだった。
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