おとしもの

□1.紫のスマホ
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それぞれの想い





洛山と秀徳の試合、凪沙は解説を交えながらうなったり、ため息をついたり、目を大きく見開いて驚いたり、

見ているこっちが楽しくなった。



「凪沙見てると、ほんとに楽しい♪」


試合よりそっちのが面白いと、まあ本気で思っていたんだけれど、そういうのが凪沙に伝わってしまったみたいで、



「小羽、あんた試合見てるの?

 ほんと、お兄さん出てないと全然興味ないのね。」


・・と、バスケ大好き少女の凪沙にムッとされた。





バスケはお兄ちゃんに影響されて見ているだけで、もともと詳しいわけでもないし、興味があるのは知っている人の応援をするからであって・・



ごめん凪沙、こんな程度でマネージャーやってみようかななんて烏滸がましかったよね。
なんて、心の中で呟いた。



「あー秀徳負けちゃった〜

 やっぱ洛山強いわ。」



「ほんとだね。

 あの洛山の4番の小柄な人、すごいよね。なんか動きに無駄がないっていうか、迷いとかそういうの感じられない。」




小羽はやっぱりよく見ている。

小羽をうちの部のマネージャーに欲しいと何度も思ってしまう。
きっと気が回るし、いいマネージャーになるだろう。選手だとしても、いいかもしれない。


でも、3年になる直前の今から選手としての入部は難しいだろうから、やっぱりやるならマネージャーかも。




つづけて体育館のコートに、次の試合のために出てきた誠凛高校の兄の姿をみて、やっと出てきた、とにっこりと微笑む小羽を横目で見つつ、


「勿体無い・・」

と凪沙は呟いた。






。+゜*。.☆.。.:*・゜








以前偶然、試合会場で会ったとき黄瀬くんが呟いた。


「ねえ黒子っち。
小羽っちって、かわいいッスよね。

あんな妹いて、羨ましいっスよ。」




一瞬、何を言っているんだろう黄瀬くんは。
・・と思ったけれど、小羽は黄瀬くんを全く意識せずに、僕の友人として接してくれている。
その様子は、兄として一緒に生活している自分でさえ、清々しく愛おしいと思えてしまう。


黄瀬くんがモデルだということも、あまり興味がないのか、それとも知らないのか。小羽は一度も触れたことがない。




黄瀬くんが、小羽のことをうらやましがるのは、そんな小羽の魅力があるからだと思う。






それに、メールの相手も気になる。



携帯を落としたのをきっかけに、メル友になったとかいうその相手だ。

小羽に聞いても、年齢も若そうだとしかわからない。
名前は『せいくん』。本名とは到底思えないし、住んでいる場所も、学生なのか社会人なのか全く知らないという。

はっきりわかっていることは、男性だということだけで・・








妹がいるというのは、こうも心配ばかりするものなのだろうか。






「黒子っち、顔に小羽っちが心配だって書いてあるっスよ。」




黄瀬くんにさえ、そう言って笑われてしまった。少しだけ悔しいというか、そんな気分です。









.☆.。.:*・゜ノ。+゜*。







「あ?

黒子の妹?
あー・・確かに可愛いけど、それがなんだよ。」



「火神っちー・・
女の子に興味とかないんスか?」



バスケ以外でこんなにコイツ(黄瀬)と話したことがあったか?
いや、無いだろ。




「女って、いろいろめんどくせーしな。」



アタマをぽりぽりと掻きながら、興味無さそうに返事をした。




「小羽っちって、彼氏とかいるんスかね。」


「はあ?
そんなこと黒子に聞けよ。」



さらに面倒くさそうに火神が答えた。あーやっぱり火神っちは女の子よりバスケなんだな、と再確認した。
自分も今は、寄ってたかる女の子達よりバスケをしているほうが楽しいけれど、別に女の子と遊びたくないわけではない。


残念そうにしたつもりはなかったけれど、火神っちにはそう見えたのか、見かねて答えてくれた。



「・・彼氏とかいたら、兄妹のバスケの応援なんか来ねえんじゃねえか?」




なるほど・・・!





黒子っちは、妹を溺愛している・・ように思う。
あの子のこと、俺がそんなに気にする必要ないけど、黒子っちがあんなにも大切にしている子がどんな子なのかが気になる。


ほんとは妹じゃなくて従兄妹だと黒子っちは言ってたッスけど、そんなに心配なもんなんスかね。



気になるッス。
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