おとしもの

□2.新しい季節
4ページ/9ページ




中学3年生になった小羽っちは、
ますます可愛くなった。


バスケ部のマネージャーになって、バスケの話もいろいろするし、共通点がさらに増えて、よくLINEもする。



♪〜♬♫♪〜♪+゜*。



「もしもし。」



「あー小羽っちっスか?
 今忙しいッスかね?」



夜の9時前。
部活は終わってるし、自分が帝光中のときはこの時間くらいには、夕飯も終わってちょっとのんびり出来るころだ。




「黄瀬さん、どうしたんですか?
 お兄ちゃんに用事とか?」


「いや、小羽っち何してるかな〜とか思って電話してみたっスよ。」



「わたし・・?」



今考えれば、
たいして用もないのに電話してしまった。

今日は金曜日。比較的時間に余裕があるかなと思ったのだけれど、やっぱり不自然だったッスかね。





「最近バスケ部はどうっスか?」


「はい、4月になってから、ようやく1軍のマネージャーになりました。」




「えっ!マジっスか!?
 すごいッスね!桃っちでも1軍のマネになったのって、入学して1年半くらい経った2年の秋くらいからだった気が・・。

 さすが小羽っちっスね。」



帝光中バスケ部では、マネージャーとは言え、1軍に同行することは難しい。

1軍の士気を落とさないためにも、女子マネの起用は慎重だった。選手が他のことに気を削いだりしないように、そして選手とチームのためにしっかり自分のやるべきことを見極めれる人材だけが、1軍のマネージャーとして起用される。
なにしろ監督が、認めたマネージャーしかそばに置かないことも有名だった。



それだけ小羽っちが、監督の目に叶って、仕事も出来るってことだろう。





「これも黄瀬さんと桃井さんのおかげです。
いろいろ教えていただきましたから。」



「そんなことないっスよ。小羽っちの頑張りの成果ッスよ。
 じゃあ、今は全中に向けて忙しくなる頃ッスね。」






もう最後の全中から2年も経つのだ。
色々あったが、今はとても懐かしい。




「実は・・今年は、優勝するの難しいかもって言われています。

怪我のレギュラー選手も多くて、今はテーピングの巻き方を勉強しているくらいなんです。」




「そうなんスか〜・・。

 じゃあ監督もピリピリしてるッスね。」




「黄瀬さんは、どうですか?」



こういう時、やっぱり中学生ながら小羽っちは凄いと思う。

自分のことだけでなく、ちゃんと俺の話を聞こうとしてくれる。
気使いができるあたり、まるで赤司っちみたいだ。




「この間、秀徳と練習試合したんスけど、やっぱ強かったっスわ。
1試合目は負けて、2試合目はなんとか勝ったって感じっすよ。」



「秀徳高校ですか・・。
 楽しそうですね、黄瀬さん。」



「小羽っち、今度部活がないときに応援に来て欲しいッス。」


「えぇ!わたしが・・?」



我ながら、思い切ったことを言ったと思った。









この4月、帝光中から海常高校バスケ部に入学してきた後輩が、帝光中にすごい可愛い女の子がいると言った。

学年は今3年生で、転校してきた当初は学校中の噂になるほどだったとか。
後輩の言っている人物が小羽っちのことだと、すぐに解った。



『黄瀬先輩の時みたいですよ!』と後輩は言っていたけれど、彼女は目立つことを好まない。



彼女の携帯番号を聞き出そうと、男子たちが必死になっているとか、バスケ部では監督が気の利く彼女をわざわざスカウトしたとか、それはもう小羽っちなら間違いない・・と思うことばかりだった。





そんな彼女だからこそ、一度自分のプレイを見て欲しい。
黒子っちじゃなくて、ついででもなくて、俺の試合を応援して欲しい。







「いいんでしょうか?わたしなんかが、応援に行っても・・。」




「・・っ!

 もちろんっス!!すっげ嬉しいっすよ!」





思わぬ返事に、つい興奮してしまった。
どうして、小羽っちに応援にきて欲しいんだっけ・・?

あー、なんかこんな風にワクワクするのって、初めてかもしれないっス。





「じゃあ、今度東京で試合があるときは、連絡するっスね。」






どうしてか、小羽っちのことが心配で、いや、気になってしょうがないっス。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ