おとしもの
□2.新しい季節
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中学3年生になった小羽っちは、
ますます可愛くなった。
バスケ部のマネージャーになって、バスケの話もいろいろするし、共通点がさらに増えて、よくLINEもする。
♪〜♬♫♪〜♪+゜*。
「もしもし。」
「あー小羽っちっスか?
今忙しいッスかね?」
夜の9時前。
部活は終わってるし、自分が帝光中のときはこの時間くらいには、夕飯も終わってちょっとのんびり出来るころだ。
「黄瀬さん、どうしたんですか?
お兄ちゃんに用事とか?」
「いや、小羽っち何してるかな〜とか思って電話してみたっスよ。」
「わたし・・?」
今考えれば、
たいして用もないのに電話してしまった。
今日は金曜日。比較的時間に余裕があるかなと思ったのだけれど、やっぱり不自然だったッスかね。
「最近バスケ部はどうっスか?」
「はい、4月になってから、ようやく1軍のマネージャーになりました。」
「えっ!マジっスか!?
すごいッスね!桃っちでも1軍のマネになったのって、入学して1年半くらい経った2年の秋くらいからだった気が・・。
さすが小羽っちっスね。」
帝光中バスケ部では、マネージャーとは言え、1軍に同行することは難しい。
1軍の士気を落とさないためにも、女子マネの起用は慎重だった。選手が他のことに気を削いだりしないように、そして選手とチームのためにしっかり自分のやるべきことを見極めれる人材だけが、1軍のマネージャーとして起用される。
なにしろ監督が、認めたマネージャーしかそばに置かないことも有名だった。
それだけ小羽っちが、監督の目に叶って、仕事も出来るってことだろう。
「これも黄瀬さんと桃井さんのおかげです。
いろいろ教えていただきましたから。」
「そんなことないっスよ。小羽っちの頑張りの成果ッスよ。
じゃあ、今は全中に向けて忙しくなる頃ッスね。」
もう最後の全中から2年も経つのだ。
色々あったが、今はとても懐かしい。
「実は・・今年は、優勝するの難しいかもって言われています。
怪我のレギュラー選手も多くて、今はテーピングの巻き方を勉強しているくらいなんです。」
「そうなんスか〜・・。
じゃあ監督もピリピリしてるッスね。」
「黄瀬さんは、どうですか?」
こういう時、やっぱり中学生ながら小羽っちは凄いと思う。
自分のことだけでなく、ちゃんと俺の話を聞こうとしてくれる。
気使いができるあたり、まるで赤司っちみたいだ。
「この間、秀徳と練習試合したんスけど、やっぱ強かったっスわ。
1試合目は負けて、2試合目はなんとか勝ったって感じっすよ。」
「秀徳高校ですか・・。
楽しそうですね、黄瀬さん。」
「小羽っち、今度部活がないときに応援に来て欲しいッス。」
「えぇ!わたしが・・?」
我ながら、思い切ったことを言ったと思った。
この4月、帝光中から海常高校バスケ部に入学してきた後輩が、帝光中にすごい可愛い女の子がいると言った。
学年は今3年生で、転校してきた当初は学校中の噂になるほどだったとか。
後輩の言っている人物が小羽っちのことだと、すぐに解った。
『黄瀬先輩の時みたいですよ!』と後輩は言っていたけれど、彼女は目立つことを好まない。
彼女の携帯番号を聞き出そうと、男子たちが必死になっているとか、バスケ部では監督が気の利く彼女をわざわざスカウトしたとか、それはもう小羽っちなら間違いない・・と思うことばかりだった。
そんな彼女だからこそ、一度自分のプレイを見て欲しい。
黒子っちじゃなくて、ついででもなくて、俺の試合を応援して欲しい。
「いいんでしょうか?わたしなんかが、応援に行っても・・。」
「・・っ!
もちろんっス!!すっげ嬉しいっすよ!」
思わぬ返事に、つい興奮してしまった。
どうして、小羽っちに応援にきて欲しいんだっけ・・?
あー、なんかこんな風にワクワクするのって、初めてかもしれないっス。
「じゃあ、今度東京で試合があるときは、連絡するっスね。」
どうしてか、小羽っちのことが心配で、いや、気になってしょうがないっス。