おとしもの

□3.ひまわりの想い
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夏休みももうすぐ終わる。
先日終わった全中大会も不思議と、
ずっと前のことのように思える。
部活がないと、うんと帰り時間も早くなって、運動場で部活をする運動部の様子をみるのも新鮮だ。





「お〜い小羽、
 一緒に帰ろう!」



「うん。今日も宿題結構でたね。」




部活が違ってた凪沙と一緒に帰れるようになったのも、
嬉しいことだ。

夏休み中の学校での補習は、3年全員参加だ。
バスケ部などは、スポーツ推薦で高校からスカウトされている選手も多いが、
勉強しなくても良いわけではない。


自分は、マネージャーなので尚更、普通に受験をしなくてはならないのだ。





「ね、小羽は志望校決めた?」


「ん〜ちょっと迷ってるけど、一応。」




まだ誰にも言ってない志望校。
何故かというと、
学校の人には知られたくない理由があった。




「そっか、私も大体決まったよ。
 スポーツ推薦、もらった!」



「ほんとに!!おめでとう!
凪沙、頑張ってたもん。よかったね」




全中では2回戦負けだったけれども、全中に出場した女子バスケ部の主将だ。
それに凪沙は身長も3年になって伸びて、今は170センチ。
スカウトされて当然だろうと思う。





「楽しみだな〜高校へ行っても、凪沙のバスケ姿が見れるんだ♪」


「だって、いっしょの高校だとはかぎらないでしょ?
それにまだ難関の試験だってあるし。」




「試験は大丈夫だよ。まだ時間もあるし。
別の高校になっても、試合見に行くから、
絶対!」











全中の終わったあと、

私は桐谷くんに呼び出された。





バスケ部3軍の男子に、追いかけられて怖い目にあった日から、できるだけ一人でいることをさけ、
キャプテンやコーチ、他のマネージャーたちと一緒にいるようにした。



怖いけど、逃げてばかりもいられない。




『ねえ、七原さん。
 やっぱり君のことを諦めることなんて
絶対無理みたいだよ。

 すごく好きなんだ。愛してるから。』




そんなに言われても、断るしかできない。




『だから、諦めきれないといっただろ!』




そう言った、桐谷くんの表情も声も怖くて、その場で泣いてしまいそうだった。







そのあとからだった。
桐谷颯汰が、ストーカーのようになったのは。


学校の帰りは待ち伏せされ、
部活の連絡用の携帯のアドレスに、長々と想いを綴った文章が1日に何通も送られてきた。
どうやら、学校内では写メをとられているようだし、
凪沙が常に一緒にいてくれて、警戒してくれていなければ、とっくにまた危険な目に合っているだろう。


最近、まえに私を取り囲んで追いかけてきた、バスケ部3軍のメンバーたちが、
桐谷くんと話しているところも見た。



電話番号は、
バスケ部キャプテンだった信頼できる友達と、凪沙くらいにしか教えていないから、おそらく調べられることはないだろうと思う。





兄にいうと、また多大に心配するのだろうか。





唯一、以前心配して必死に探してくれた黄瀬さんにだけ、話してみた。

そしたら黄瀬さんが、
心配してときどき学校へ迎えにきてくれるようになって、逆にちょっと申し訳なかった。
夏休みの後半は、部活も早く終わるのだと言って、ほぼ毎日のように来てくれた。











「ねね、七原さん!
モデルの黄瀬涼太と、どうやって仲良くなったの?」

「えーーっいいなぁ///
もしかして、彼氏だったりするの?」

「超かっこいい!
 なんか七原さんとならお似合いかも。
 うらやましい!」






迎えに来てくれるのはすごく助かるのだけれど、
すごくすごく周りが騒がしくなった気がする。

朝から、黄瀬さんの話を聞かれっぱなしで、
あ、でもそのおかげで桐谷くんには近づかれにくくなっているのかもしれないけれど。

とにかく、そんなにすごい有名人なんだろうか。











今日も、
爽やかに校門の柱に寄りすがって、手を振る黄瀬さん・・。

確かに、その様子は、絵になる・・。




「小羽っちーーー!」



「こんにちは、黄瀬さん。
 今日は来るって言ってました?」



たいてい今からいくっス、てメールが来る。
今日は特にメールはなかったはず。




「サプライズっていうか、びっくりさせようかと思ったッスよ。
そしたら、小羽っちもきゅんってなるかもと・・・。」




「なりませんっ///]




なんてことを言うんだろうと、一瞬頭の中が真っ白になってしまう。
そういうところが、うわてっていうか高校生っぽいかも。




「その感じ、ちょっと黒子っちっぽいかも。
さすが兄妹ッスね〜。

あぁー、小羽っち顔真っ赤ッスよ。すごく可愛いッス。」








「〜〜っ、黄瀬さん
からかうなら一人で帰りますよっ!」



「ごめんッス、おこんないで欲しいッス。」




顔が真っ赤なのは、自分でもわかる。
だって顔が腫れ上がっているみたいに、熱いから。それになんかよく周りが見えない。





「小羽っち、帰りどっか寄らないッスか?」


「昨日も寄りましたよ?
 今朝は兄からこんなお達しも来てますし。」






小羽が携帯のLINEを起動して見せてくれたメールには、
兄のテツヤから小羽に送った、
注意メールだった。




      黄瀬くんには
      気をつけるように。
      甘い顔すると、
      すぐ調子にのりますから。
      嫌な時や迷惑なときは
      断るんですよ。





「えぇぇ〜黒子っち酷いっす!
 どゆことスか〜?このメール!」



私が横で笑っていると、黄瀬さんも困ったように笑っていた。





「小羽っちは俺と寄り道、嫌なんスか?」




「・・嫌じゃないですよ。
 黄瀬さん楽しいですもん。」




そういうと、

『嬉しいッス』


と最高の笑顔で言われたものだから、この人は本当に、
人を惹きつけるのが上手っていうか、
モデル向きだなぁなんて思ってしまった。


















(・・・黄瀬センパイ?

 なんで、七原さんと知りあいなんだ?)




桐谷颯汰が、小羽のことを好きだってのも、学校内では公然の噂になっていた。
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