おとしもの

□3.ひまわりの想い
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征十郎視点





彼女からのメールは、
告白されたとの
報告だった。




メールだけの関係だとはいえ、
小羽のことはよくわかっている。
気遣いができて、一生懸命で
素直でまっすぐな小羽のことだ。


姿さえ知らないものの、きっとモテるだろうと思ってはいたが、
小羽に告白した相手は、高校生であろう兄の友人だという。



ストーカーみたいのに纏わりつかれているくらいなら、以前玲央が言ったみたいに、


彼氏でもできれば、
それもなくなるだろう。






僕は、今は

小羽のそばにはいれないのだから。








彼女を

守ってあげることができない今、

携帯電話の画面上から、



見守っていることしかできない。













          せいくん
          ひさしぶりです。

          


  やあ、
  ひさしぶりだね。


  彼氏とはどうだい?



          うん、
          まあまあかな。
          たのしくやってるよ。


   
  ほかの男とメールしてて
  やきもち焼かないかい?



          大丈夫。
          せいくんは、
    
          特別だから✨



  そうかい?








『特別だから』

思いのほか、その言葉がうれしくて甘んじた。
彼氏ができても
特別にしてくれるんだね、君は。


でも、そばで守ってくれている彼を
大事にしなくてはいけないよ。







          ところで、相談です。



  なんだい?


          進路のことで。


          せいくんは
          進路決めるときは
          何を基準に決めたの?









    

おおよそ、
お互いが年齢の差があることは
承知していた。




以前彼女が送ってくれた写メで、中学生で受験生らしいな、とは気が付いていたけれど

互いに、自分の住んでいる地名や
学校、年齢など、自然と聞かないように、触れない内容でやり取りをしていたから、
詳しいことは何一つ知らなかった。


小羽は高校進学で悩んでいるようだった。






 
  ピアノを続けたいのかい?




          なんでわかったの?



 
  引っ越してから、
  弾いていない、
  弾きたいって
  言ってたから

  そうかなと思った
  だけだよ。




          音楽科のある学校に
          行きたいけど、
          迷ってるの(+_+)




  そうか。
  
  俺は、やりたいことと
  やらなければならないことを
  両方できると
  思えたところを
  選んだよ。




          せいくんは
          起用だからね。



  そうかな。



          うん!(^^)!



  
  後悔しないほうを
  選ぶといい。



                 
          そっか、
          よく考えたら
          簡単なことかも。




  小羽は単純だね。





          また馬鹿にしたー
          (; ・`д・´)









彼氏の話もそこそこに、
なんとなく
ちょっとしたメールのやりとりは
続いた。
















✬〜〜✬〜〜✬〜〜✬〜〜✬〜〜✬〜〜











「ね、小羽っち、高校決めた?」




学校帰りのわずかな時間、

黄瀬さんと寄り道したりするのが、唯一会える機会だった。


夏休みも終わってもう2学期が始まったから、高校の部活が終わるのは8時ころ。

それから帰ってくる黄瀬さんは、9時ころになる。


ちょうど、塾の終わりが9時ころだから
塾のある駅前のファーストフード店とかロータリーで、ほんとにちょっとだけ話をする。





「高校は決めましたよ。
 でも黄瀬さんには内緒です。」



「えぇ〜なんでっスか??」



「だって、」





ベンチに、10センチほど隙間を開けて座った隣には、むくれた顔の黄瀬さん。



お試しで、って言ってくれたからか、
あまり意識せずに付き合えている気がする。


でも、一緒にいればいるほど、その人気ぶりも身に染みて感じるし、私なんかがいいんだろうかと恐縮してしまう。





高校生なのに、ふたつも年上なのに
意外とかわいいなって思えるところもあって。





「だって、決めた高校、海常高校じゃないですから〜・・」




「えぇぇ〜、、なんでっスか〜。

こんなに会えないのに、更に違う高校いくんスかぁ?

海常バスケ部でマネやって、俺のためにドリンク作ってくれて、合宿で内緒で夜どうし話するとか、夢なのに〜」






あからさまにがっかりしている、黄瀬さん。
それも楽しそうだけど、きっと学校にもたくさんいるファンの女の子たちに殺される。




「ん〜、でも、

 やりたいことあるし・・」




「ピアノ?」




「はい。」




「ほんとに、好きなんだ。
 ピアノ。
 こんど、聴きたいッス。」



そういうと、いつもしてくれるみたいに、
頭にぽんって大きな手を乗せてきた。

これが妙に落ち着くし、嬉しい。




でも今日は、頭に乗せた手が・・くりくりっと頭を撫でた後に、頭ごと黄瀬さんのほうへ、ぐいっと引き寄せられた。



まるで頭を預けて、寄りかかってるみたいに。








「き、黄瀬さんっ・////」


「そろそろ、リョウタってよんでくんないんスか?」



そう言って、見下ろしてくるのがわかって、恥ずかしいけどそうっと黄瀬さんのほうを見ると、

結構顔が近くて、ドキドキした。






「それは・・わたしには、

ハードル高いです・・・」




「でも、折角お試しでも、彼氏なんだから。

そのくらい特典ほしいッスね」





「この状況も、お試しには・・・

ちょっと、アレです・・」






「小羽っち、好きッスよ。」




「///はい・・///
 
 ありがとう、ございます・・」






すごく、温かくて


すごく、守られてて


すごく、居心地がいい。








いつの間にか、帝光中学でも噂になってきて、そのうちストーカーされてたことも忘れるくらい、
落ち着いた毎日を送れていた。

きっと、桐谷くんも黄瀬さんとのことを耳にしたのだろう。
部活も終わってしまったからか、最近は、まったく接触することもなくなった。






                    
  
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