おとしもの
□4.高校入学
10ページ/11ページ
♩〜♬〜〜🎵🎶〜〜♩〜♬〜〜🎵🎶〜
「もしもし・・・
赤司か。」
『やあ、真太郎。久し振りだね。』
誰かと携帯を取れば、中学時代のチームメイトで、帝光中学バスケ部の元キャプテン、赤司征十郎だった。
帝王といえる、負け知らずの赤司征十郎は、自身が最も尊敬でき一目おく存在でもある。
人一倍忙しいはずなのに、それでもチームメイトの事を気にかけ、マネージャーには一言のお礼を忘れず、全員を従わせるまでのバスケの技術と統率力。
きっと高校でもそれは変わらないのだろう。
そんな赤司が、ホームルームが終わった部活前、一体何の用なのかと不思議だった。
『聞きたいことがあってね、』
そう含みのある言い方をしたかと思うと、今は電話をしていて大丈夫かと、気に掛ける。
「赤司、なんだ?インターハイのことか?」
『いや、秀徳のバスケ部の事なんだが・・。』
「部内の情報は、教えないのだよ。」
『もちろんだよ。
俺の聞きたいのは、真太郎のところのマネージャーの事だ。』
一瞬、意味が分からずなんのことだと言いかけたが、桃井の能力を見いだしたのは赤司だったことを思い出し、マネージャーの小羽になにか引き出せる能力でもあったのかと、そう思った。
「マネージャー・・。
七原小羽のことか?」
『あぁ、彼女のことで聞きたいことがある。』
「ただの1年のマネージャーなのだよ。
赤司が目にとめるようなことは・・」
言いかけて、ハッとした。
小羽が秀徳に入学してから、まだ一度も洛山高校とは試合をしていない。
なぜ赤司が小羽の事を知っているのだろうか。
試合どころか、彼女はまだ公式戦のベンチに入ったこともないのだ。
『その七原というマネージャーのことを教えて欲しい。』
「・・小羽は、ただのマネージャーなのだよ。
帝光中出身で、黒子の妹だ。」
『・・黒子の?』
声のトーンからは、さほど驚いているようには聞こえなかったが、聞き返すという行為自体が、赤司には珍しい。
「そうだ。正式には従妹なのだそうだよ。
訳があって一緒に暮らしているそうだ。」
『その子は、音楽科に?』
「ピアノ専攻の音楽科だ・・・知っているのか?」
少しだけ、確信した。
赤司は何かを知っている。
小羽とは、恐ろしい奴だ。
黒子の妹だということだけでも驚いているのに、黄瀬が彼氏で、なおかつ赤司とも知り合いなのか?
『じゃあ、彼女のもっている携帯の特徴は・・・?』
・・・星の飾りのついたむらさき色だ・・・
『そうか・・・。』
一体、携帯がなんなのだよ!!
まったく先の見えないハナシに、少々不服だったのだが、携帯に何があるのか・・?
「もういいのか?
ちなみに、小羽には恋人がいるのだよ。
」
『あぁ、知っているよ。』
少しだけ、声のトーンが落ちたような気がした。
恋人が黄瀬なのを知っているのか。
まさかそれで気になった、というわけじゃないだろうな。
「黄瀬とは、うまくやっているのだよ。」
『黄瀬?
黄瀬が恋人なのか・・・?』
珍しく赤司が、声を乱した。
こんなことは今までに見たことも聞いたこともない。
常に冷静で、見透かしたように、
そんな物言いしか・・。
黄瀬が恋人なのは知らなかったのだな。
「小羽が中学のころから付き合っているのだそうだよ。
黄瀬が時々、うちの学校まで迎えに来ているがかなり鬱陶しいのだよ・・!」
『黄瀬か・・・・』
それから赤司は、多くは話さず、
簡単に礼だけいうと電話を切った。
一体何なのだというのだよ。
小羽に、洛山の赤司から小羽の事を聞かれたと言ったら、なぜか喜んでいた。
偵察ですかねーなんて、能天気なやつだ。
携帯を誰かに見せたことがあるか、と尋ねると、母の形見のようなもので、とても大事にしているという。
ただ、一度携帯をなくしたのを拾ってもらったときに知り合った人と、メル友になってもう2年くらいメールのやり取りをしているのだという。
まさか、そのメールの相手とは・・・