おとしもの
□5.夏・合宿!
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♢緑間の苦悩
合宿とは、何かと不便なことが多い。
これだけ長い合宿で、しかも宿泊所は買い物も行きにくいくらいの郊外だ。
テーピングはすぐに足りなくなってしまうし、つめた〜いおしるこも売り切れてしまった。
テーピングは、小羽がたくさん持ってきてくれていたため困ることはなかったが、合宿メンバーは常に小羽のところへ集まり、隙あらば携帯番号を聞き出そうとする奴もいるほどだ。
「小羽ってさー、
秀徳ではあんま思わなかったけどさ、
結構モテるよねー。シンチャン。」
頭の後ろで腕を組み、宿舎から少し離れたコンビニまで歩く高尾は、少し不満げだった。
「まあな。
桃井にはいつも青峰や黒子がいるからな。
黄瀬では、あいつのボディーガードにもならないのだよ。」
「アハハ!
シンチャンさ、
俺、こっちと合流したときから機嫌悪いとは思っていたけど、みんなが小羽ちゃんかまうからだったんだ。」
お前もそうだろう。
そう思ったが、あえて口にするのは馬鹿馬鹿しいように思えて、黙っていた。
きっと高尾もおなじだ。
「でもさ、小羽はすげーよな。
ほかの一流校の先輩マネたちに、負けないくらいの仕事っぷりだろ?
そんで、黄瀬君の彼女だってんで嫌がらせも受けるわ。そりゃ。」
「!!
そうなのか!?」
「はぁ?
シンチャンどんだけ鈍いのよ。
結構やられてると思うよ。あの様子じゃ。」
組んでいた腕を下におろすと、高尾の表情が一変した。
「桃井は知らないのか?」
「さあ、気づいてないかもね。
桃井さん割と体育館にいないことも多いしさ。
それに小羽は誰にも言ってなさそうだしな。」
「赤司は、
赤司は気が付いているかもしれないのだよ。」
ふと、赤司の事が頭をよぎった。
あいつはきっと、知っている。
あんなにも、小羽の事を見ているのに、気がつかないはずはない。
「最近さ、シンチャン
学校でも赤司くんにメールとか送ってたでしょ。
小羽の写メとかさ。」
「・・・・」
「あの小羽の、中学の頃からのメール相手ってさ、もしかして赤司くんなんじゃなーいの?
シンチャン。」
やはり高尾の感の鋭さは、
並外れている。
でもそれが分かったところで、何もできることはないし、事実正直言って赤司は何も周りの手を必要とはしていないだろう。
あいつはそういう奴だ。
もしも赤司が、小羽に自分がメール相手だと告白したらどうなるか。
小羽には黄瀬という彼氏がいて、あいつがベタ惚れしている小羽を譲るとは考えにくい。
見たことないくらいに、黄瀬は小羽に執着しているからな。
「ねぇ、シンチャン。
小羽が黄瀬くんと付き合ってなくてさ、赤司くんが目にとめることがなかったら・・
告ったりとかしてた?」
「・・・赤司は関係ないだろう。」
一瞬、ドキリとした。
相変わらず、そういうところをツいてくるのはいつも意表をつかれて驚く。
「だってさ、シンチャンと赤司くんて仲良いじゃん?」
「別に、なのだよ。」
「じゃあ、赤司くんがいたとしても告ったんだ。」
「適当なことばっかり言っているんじゃないのだよ!!高尾!!」
黄瀬と付き合っていなくて、赤司とも無縁の小羽がいたとしたら、
いやその前に、黒子がそばにいるから何も変わらないだろう。
シスコンかと言いたくなるほどの、黒子の小羽に対するガードは固い。
しかも次に、ここへ来て紫原のマークまでついてしまっている。
黄瀬に同情するのだよ。
「あー・・
シンチャン。
俺だったら、キセキのメンバーがこぞって小羽の周りに居なかったら、
そしたら遠慮なくもらってたよ。」
驚いた。
正直、そこまで小羽に対して高尾が想いを寄せていたとは。
「キセキは関係ないだろう。
自信がないのか?」
「ないに決まってんじゃん。
あんな人たち相手に、俺一人が、
バスケでもほかの部分でもかなう気がしねー
あの人たち、マジですごいしな。
シンチャンも。」
「ふん、俺は黄瀬には勝てる気がするのだよ。」
コンビニに着くと、そこに紫原と黄瀬、青峰に桃井と小羽がいた。
みんなでアイスを食べている。
まるで中学の頃に戻ったかのようで、
でもその中に一人大切な後輩が加わって。
「先輩、つめた〜いのおしるこ、ありましたよ?」
そういって可愛く笑うもんだから、つい笑みがこぼれた。
「あーー
みどちん、だめだかんねー。」
やきもち妬きの紫原は、そういうと小羽を背後から抱えこんで、頭に顎をのせたままアイスをかじった。
顔を赤くしてじたばたする小羽を見て、今度は黄色のあいつが騒ぎ出す。
「紫原っち!!
小羽っちにさわらないで欲しいッス!!!
俺のなんスから!!」
3年前と、なんら変わらないこの様子。
おまえたち・・
お店の前で騒ぐのはよすのだよ!!