おとしもの
□5.夏・合宿!
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インターハイ予選は順当に勝ち進み、結果優勝をした。昨年は誠凜高校に敗れたため、今年は絶対に勝ちたいのだと、高尾キャプテンが言っていたのを思い出した。
予選が終わり、インターハイでは海常とは当たらなかったものの、各地区の強豪とあたり、準々決勝で秋田の陽泉高校に負けた。
3年生の高尾先輩と緑間先輩には、最後のインターハイだった。
二人とも、最後は泣きながら笑ってた。
私も、インターハイの最後は涙が出て止まらなかった。
だって、インターハイで勝ち進んだ誠凜高校は、決勝であの京都洛山高校と対戦して、結果は負けてしまったのだけれど、とてもいい試合だった。
去年の雪辱戦だったのだけれど、お互いのチームの選手たちは、固い握手をして、ウインターカップで・・と言って、別れた。
洛山高校の選手たちは、みんな大きくてすごい選手ばかりだった。特に主将の赤司さんは、素人がみてもすごい方だとわかるくらい、的確で冷静で、声のかけ方や試合の流れなんかもちゃんと読んでいるみたいだった。
あんなすごい人は見たことがない。
もちろん、高尾先輩もすごいPGだけど、それとは全然違う。
司令塔とかそういう呼び名も適さない。
なんというか、
『帝王』
みたいな?
そして、試合後に緑間先輩やお兄ちゃんを含めた、キセキの世代って呼ばれるメンバーが集まっていた。
(それは高尾先輩が教えてくれた)
青峰さんもいるし、桃井さんも一緒だ。
りょうくんも、そこにいる。
みんながすごい人だってのは知っていたけど、みんな帝光中の同級生なんだそうだ・・すごい。
あー見てると、高校バスケ界の錚々たるメンバーすぎて。
テツヤお兄ちゃんとか、りょうくんとか、緑間先輩とか・・割と身近なメンバーなのに、なぜか今日は近寄りがたい。
あー・・きっと赤司さんとかいるからかも。
凄すぎる人だから。
あのプレイとか見ていて、あこがれたり尊敬したりしない人はいないと思う。
「七原。ちょっと来い。」
監督に呼ばれたので、荷物をそばに置いて急いでいくと、頼みがあるという。
「なんでしょうか。」
「夏休みはじめに日本バスケット協会U-18の合宿があるのだが、マネージャーとしていってもらえないか?」
「U-18、すごいですね。
緑間先輩が選ばれているんですか?」
「そうなんだけどねぇ、高尾はチームの合宿もあるし・・緑間のお目付役として、それとウチからもマネージャー1人出さないといけないんだよねぇ。」
去年も選ばれていたらしいが、夏休みは大抵海外の父のところへ長期で滞在する。
去年の国際親善試合も見れなかったので、あとから聞いてとても悔しい思いをした。
「私でいいんでしょうか?1年なのに・・。」
「もちろんだよ。
君の働きぶりは、他監督からも定評あるしねぇ。心配しなくていい。」
きっと他の学校からは、ベテランマネさんたちが来るのだろう。
1年生で参加するのは恐れ多いけれど、こんな機会はきっともう二度とない。緑間先輩をはじめ、有名選手たちが一同に揃う合宿だ。
「はい。よろしくお願いします。」
深々と会釈をすると、監督は少し安心したようにその場を後にした。
結局、チームの合宿には参加せず、そっちの合宿へ行くことになった。
少しだけ日程が被ってしまっていたからだ。
なんとなく喜ぶべきところなのだろうけど、喜べないのが、合宿にはりょうくんがいることだ。
きっと、なんか面倒なことになりそうな気がする。
従兄(あに)のテツヤは、もちろん選ばれていたが、二人で同時に合宿に選ばれたもんだから、叔母さんがとても喜んでいた。私はマネージャーなんだけれどね。
「小羽、荷物少ないですね。桃井さんなんてあと二つはバックをもって行くと思いますよ。」
「え・・そうなの?
結構着替えとか入れたんだけど。
洗濯機あるって言ってたし。」
「黄瀬くんが、テンション高すぎて危ないので気を付けてください。」
心配性の従兄(あに)からの忠告だ。
たしかに、昨日も電話で・・・
『小羽っち!
合宿でマネージャーしてくれるってことは、俺のところにドリンクとか持ってきてくれるって事ッスかね!!』
「うーん・・きっとそういうのは先輩マネの方たちがやるんじゃないかな・・?」
『えーーー?いっつも緑間っちには、いろいろお世話してるのにぃ?
じゃあさ、夜とか部屋遊びに行っていいッスかね?』
「だ、だめです。」
やばい、この人きっといろいろやらかしそう・・
同行する女子マネは全部で4人。
桃井さんと、あとは秋田の陽泉高校のマネさん1人と、愛知の中日大付属高校のマネさん。
いずれも3年生の先輩マネさんだから、いろいろと仕事教えてもらおう!
『ね、小羽っち。』
「はい?」
『最終日はお楽しみの夏祭りがあるッスけど、一緒にいこう?』
「・・・うん💛楽しみ。」
やっぱり、優しいな。
私は徐々に、せいくんへあこがれる気持ちに蓋をするようにりょうくんの優しさに、甘えていった。