おとしもの

□7.冬のおくりもの
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🍁11月30日は誕生日





「ね、小羽、これこれ見てよ。」


「うわぁ・・ちょっと見れない。恥ずかしいね」




今日は誕生日デートと称して、仲良しの凪沙とデートをしている。
テスト期間に入り、部活が2時で終わったから久しぶりに時間ができたのだ。
時間が勿体ないので、制服でってのがちょっと残念だけど、女の子同士の買い物はものすごく楽しい!


そして今いるのは、下着売り場。
可愛い下着をお揃いで買おうってことになり、ちょっと大人な下着をチェック。



「凪沙は何色?水色とか薄いグリーンとか?」


「あーそうだね。そういうのがいいわ。」


「薄い黄色もよさそう。」


「黄色ももってないかも。黄色かグリーンにしようかな。」




可愛い系の甘い感じのレースのついた、上下セットの下着と、形違いの柄お揃いで冬用のパジャマも買った。

下着のセットは、凪沙が薄い黄色、私が薄いピンク。
パジャマは、凪沙は同じく黄色ベースの水玉でショートパンツと長袖のシャツタイプ。
私は長袖のトレーナタイプの上とショートパンツ。エメラルドグリーンとピンクの水玉にした。


実は今日は凪沙の家に泊まりに行くことになっている。
そこでのパジャマパーティーだから、二人でかわいい下着とパジャマ買おうってことになって・・・




「あと、何かお菓子買っとかないとね。
うち両親がおばあちゃんちに行ってるから、何もないんだ。」


「ごめんね、ご両親がお留守の時にお邪魔して。」



「えー、何言ってんの!
ママも小羽が来るなら、安心って言ってたし、お兄ちゃんなんて死ぬほど喜んでたよ?」



凪沙には兄がいる。
学校さえ違うが、和成先輩や真太郎先輩と同じ2こ上の3年生。
バスケは夏で引退したけれど、小学校から9年間のキャリアなんだそうだ。




「ねえ、ちょっとお茶してこうよ。
甘いもの食べたいしさー」


「うん、寒くなってきたしどこか入ろうか。」



そういって、お店に入ろうとしたところ、大きな人と入口のところでぶつかりそうになった。


「わっ、ご・ごめんなさい。」


「あ?
小羽じゃねーか。」



「あ、青峰さん!」



「うわー!青峰先輩っ!」



凪沙は中学、帝光時代からキセキのファンで、とくに青峰さんの大・大・大ファンだと、しょっちゅう聞かされていた。





「友達と遊んでんのか。
部活ねーの?」



「はい、実はテスト期間中で・・。」


「ふーーん。俺んとこもだわ。
てか、うちのガッコはテスト中も部活普通にやるけどな。鬼監督だからな。」


「桐皇学園の監督さんて、そんな厳しい方なんですか?結構優しそうなのに。」



一度何かの大会のお手伝いで、話したことがあるが、とても優しい印象があったような・・。



「青峰さんも、お茶しに行くんですか?」


「あーいや、ちょっと買い物っていうか、サボり半分だな。」



いや、サボりって・・
ポリポリと罰が悪そうに頭をかいて宙を仰いでいる。一応悪いことしているとは思っているんだ。





「・・んで、おまえ黄瀬と別れたらしいじゃん。
好きなヤツでもできたのか?

ま、どうでもいいけどな。」




「えっ・・と、なんで知ってるんですか!?」




あ、青峰先輩らしい・・

隠しているわけでもないけど、どうしてほかの学校の先輩までもがそんなプライベートなことまで知っているんだろう、不思議だ。
一体どこまで話は広まっているんだろう。





「うちには情報ツウがいるだろ。
たぶんテツから聞いたんだろうけどな。

あー、あとさ。」





なんだか少し言いにくそうに、今度は顎のあたりをコリコリと掻きながらこっちを見降ろした。
この人は、不器用だけどすごく優しい人。
兄と中学時代親しかったようだけど、兄が一緒にいた理由がよくわかる。





「あいつ、・・灰崎知ってんだろ?

お前黄瀬と別れたんなら、試合の時とか気をつけろよ。
あいつ中学んときから、黄瀬に変に対抗心っていうか、妙に固執してたからな。」




「灰崎さん・・福田総合のですか?」



「あぁ。知り合いなんだろ?
まえにテツが心配してたからな。」




中学の頃、試合を見に行って話したことがある。ちょっと不良っぽいけど、そんなに悪い人じゃないと思っていたんだけどなぁ。




「わかりました。
ありがとうございます。」



「じゃあな、テツによろしく〜」





大きな体で手を振る後姿は、街中でも目立つ。
その青峰さんにさつきさんという美女が一緒だとなおさら、目立つ。




「あーーもうっ!青峰さんにサインとかもらいたかったのにぃ〜〜!」


「あ、ご、ごめんっ
紹介すればよかったよね。」



「でも幸せだった〜。優しいよね青峰さん!
私のプレイスタイル、あの人が見本なんだよね。まあ、あんなふうには到底できないけど。」




嬉しそうに話す凪沙に言わせれば、
青峰さんはバスケする人にとっては憧れの人らしく、去年は月バスの特集も組まれたことがある。
あのプレイみたら、確かに釘づけになる。

ただ、選抜の合宿のとき、休憩時間にグラビアの雑誌とか広げるのはやめて欲しかったけど。





お茶を終えて、荷物を自宅に取りに行くとすぐに凪沙の家へ。
明日は誕生日だから、明日は家でお祝いをするんだけど、毎年わが子のように盛大にお祝いしてくれる叔父さん叔母さんとテツヤお兄ちゃん。本当に幸せだ。

家にいた叔母さんに行ってきますと手を振った。












🏠・・・・🏠・・・・🏠・・・・





「ごちそうさま。」


「ごちそうさまー、あ〜おなか一杯だね〜」


「小羽、お風呂入って、部屋であそぼ!」




テスト期間中だというのに、凪沙、ほんとにありがとう。って気持ちでいっぱいだ。
二人で会える日は滅多にない。
普段はお互い部活もあるし、予定が合わないのだ。だから今年は、この誕生日とテスト期間というものを活用して、お泊り会をやろうとずいぶん前から計画していたのだ。
事前にテスト勉強もやっておくこと、という約束もして。















「ねえ、黄瀬さんとは別れてからメールとかしてないの?」


「うん、してないよ。
緑間先輩伝いに、メッセージは貰ったけどね。」




「あれだけ小羽にベタ惚れだったのに、よく素直に別れてくれたよね。
てっきり、しつこくされたりして、とか想像してたんだけどさ。」



「すごくいい人なんだ。りょうくんは。
優しくて泣けちゃうくらい。
今は私のファンでいてくれるって言ってくれたから、私もりょうくんのファンでいることにしたの。」





凪沙はお菓子をつまみながら、そっか、と聞いてくれた。


凪沙の今の気になる人、学校の嫌な先生とか、普通科のクラスの話とか日を越えても話が尽きない。
女子会、これだからやめられないんだよね。







♬♪〜


0:05



「小羽、メールだよ。」


「うん、こんな時間に誰だろ・・。」








  こんばんは
  夜分にすまないね

  お誕生日おめでとう
  16歳を楽しんで。







「ね、これってメル友王子?」


「王子って・・せいくんだよ。
誕生日、覚えていてくれたんだ。

去年はお互い誕生日を知らなくて、過ぎてからおめでとうしたんだよ。」



「大人っぽ〜い♥
絶対大人の男子だね、これ。」




「そう思う?
私も最近社会人のひとかもって思ってるんだ。
なんか会話も落ち着いてるしね。」







          こんばんは
          ありがとう(o^―^o)ニコ
        
          今年はもっと
          高校生活を楽しむよ❕
          





深夜なので簡単なお礼をメールで返した。
すぐにおやすみと返事が来るところあたり、せいくんらしいなーなんて思ったりした。




「ねえ、その人と会いたいとか思わないの?」



「んー、会いたいけど・・
いろいろと知ってしまったら、せいくんとのメールとかも終わってしまいそうな気がするから。
知らないほうがいいのかなって思って。」



「なるほどね・・。たしかに。
あんたらしいかな。」








電話は月に1度くらい、私のほうから掛けて、あちらからも時々かかってくる。

電話をするようになっても、
どこに住んでいるのか、何をしている人なのか、
年齢はいくつとか、

聞くことはなかった。



もちろんせいくんのほうからも聞かれることはなかったし、
それがお互い楽だった。







いつかせいくんに会えることがあるのなら、
私は、きっと、たくさんの




ありがとうを




伝えたいな。
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