おとしもの

□7.冬のおくりもの
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♠最後のウインターカップ




ウインターカップは、毎日のように試合がある。次々とこなさないと、出場する学校も多いため終わらないのだ。



秀徳高校は順当に勝ち進んで、今日が3回戦。
相変わらずキセキの世代のメンバーのいる学校は、勝ち残っている。
今年も、上位はいつもの学校名が占めてしまうだろうと思う。




「あ〜、はねちん久しぶり〜💛」



「紫原先輩!
お元気でしたか?」



「ん〜はねちんさぁ、ぜんぜんメールとかしてくんないよねー。」



「す、すみません・・ていうか、メアドって交換してましたっけ・・?」



「・・・ん〜・・

してなかったかも〜・・・・ごめーん。」



「ですよね・・。びっくりしましたぁ( ;∀;)」





ゆるーい感じの紫原先輩は、頭を丁寧になでなでしながら、私に笑いかけてくれた。
結局、じゃあメアド教えてよ〜って言われて、今になってメアド交換。

新しいコンビニスイーツとか、教えてくれそう♪




「紫原、試合前なのだよ。
少しは時と場合を考えろ。」



「はぁ?別にみどちんのところとあたるわけじゃないし、いいじゃん。

それよりさぁ、黄瀬ちんとあたるんだけど、俺ひねりつぶしてくるからさー
そしたら、はねちん黄瀬ちんと別れて、俺と付き合おうよー」




「・・・・」




周りにいた、秀徳のメンバーたちが一瞬静まり返って、一斉に小羽のほうを見た。
一気に顔に血が上って、それが告白だったのだと気が付いたけど、言葉が口から出てこない。

なになに?紫原先輩、冗談が過ぎるっていうか・・恥ずかしすぎますっ!




「・・小羽は黄瀬とはとっくに別れているのだよ。」



「そうなの?はねちん。」





で、さらに紫原さんがこっちを向いたものだから、顔から火が出そうになって・・

「・・え、あ、その・・」



裏返ったような、変な声がでた・・。






「じゃあ、次の試合、さくっと勝ってくるから、終わったら一緒にお菓子食べよーね〜」





そういって、下を向いて動けなくなっている私の頭をポンポンして、陽泉高校のメンバーは行ってしまった。


きっと赤いまんまの顔で、部員の注目の中で死にそうになっていると、真太郎先輩がやっぱり助け船を出してくれた。







「いちいち迷惑なやつなのだよ。

気にしなくていい。小羽、お前は試合のサポートに集中しろ。」




「う・・はい・・。」



「んじゃーいくぞー!!」






和成先輩の掛け声で、全員に気合が入る。


今年は、チームのまとまりもいいし、真太郎先輩のコンディションも抜群だ。



















🏀・・・🏀・・・🏀・・・










「黄瀬くん、こんにちは。」



「あ、黒子っちー!」



久々の再会で、ついテンションが上がってしまったけれど、秋のU-18の大会以来だろうか。
あのとき、都合上マネ―ジャーは招集されなかった為、小羽っちとは会えなかった。緑間っち伝いに、あれっきりになっていた小羽っちにメッセージを送ったのだけれど、届いただろうか。




「調子はどうッスか?
あれ、火神っちはどこにいるんスか?」



「まあまあ、と言いたいところですが、あまりよくありません。
火神くんが苛立っていますし。」





ふと黒子っちの視線の先に目をやると、火神っちがいた。

ホントだ、なんか怒ってるみたいッス。



「どしたんスか?火神っち・・。」



「いろいろありまして・・。

海常はどうですか?黄瀬くんは調子よさそうですけど。」




「まあ、良いッスよ。
今年の夏はちょっと体力的に厳しかったッスけど、今は絶好調ッスから。

ここでかっこいいとこ見せて、小羽っちが惚れ直すかもしれないッスからね(^_-)-☆」






「黄瀬くん・・・

それはないと思います。」




彼女の兄である黒子っちの言葉に、かなりがっくり来たが、そんなのは承知の上。



正直、
小羽っちのことは、忘れられないでいる。



今まで交わしてきたメールも、一方的に撮った写メも、
脳裏に焼き付いているあの笑顔も、

抱きしめたときの体の細さも、


最後にした



キスも。







全部、まだ体に焼き付いている。






しつこくするのは、かっこ悪いし、
きっと小羽っちが嫌がる。

だから、あきらめられるまで、



もう少しだけ、



時間が欲しい。


そう思っているだけ・・









ただ、黒子っち、はっきり言い過ぎッス!

結構傷つくんスけど!





「黒子っち、

ひとつ聞きたいんスけどー・・」





「なんですか?」



「小羽っちって、好きな人いるんスかね。」





ちょっと考えるようなしぐさをした後、
黒子っちは思い出したように、話し始めた。




「あ、いるとしたらですけど、


たぶん・・・」




さらに考えるように、顎に手を当てて・・





「誰ッスか・・!?
まさか、緑間っちとか!」




「・・いえ、もしかしたら、

ずっと支えにしていたあの人かもしれません。」






「あ、


メル友の男・・スか。」






「はい。そんな気がするってだけですが・・。」






聞くんじゃなかったかも。

なんか、ちょっとショック受けたッスよ。




歳も住んでいる場所もわかんないヤツが、小羽っちの気持ち、簡単に持ってくなんて







どんなにすごいヤツなんスか。
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