おとしもの

□8.立春の花
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△合格報告会(秀徳)








「おーい!こっちこっち」




「先輩たちっお久しぶりです!」





「おーいつにも増して、嬉しそうだなー」




秀徳バスケ部の先輩達が、今日は一斉に集まって進路合格発表会だ。
その中に、なぜか一人呼ばれた1年生マネージャー。

和成先輩と真太郎先輩が来てほしいって言ってくれたけど、3年生の集まりなのにいいのかな・・。






「じゃあまず、我がチーム一の我儘エース、
シンチャンから!」





ワー!!





えらく盛り上がっている。3年生は全部で15人。


一年で入学時から特別扱いされていたらしい、真太郎先輩がいるにも関わらず、案外仲がいい。和成先輩が言うには、仲が良くなったのは、上の学年が引退してからだとか。それまでは、真太郎先輩の一日3回のワガママで不満が多く、少し浮いた存在だったのだそうだが、真太郎先輩と一緒に練習やプレイをすることで、バスケへの真剣さとか努力を人一倍するところとか、そのプレイのすばらしさがみんなにも伝わって、徐々に認められたとのことだった。



その真太郎先輩の進路は、既にメールをもらって私は知っていたが、本当にすごい人だ。





「○○大学医学部に決まったのだよ。」


相変わらず、にこりとも笑いもせずに眼鏡の真ん中を持ち上げてそういったが、先輩たちの盛り上がりはすごい。



「すげー!!ホントにやったな、緑間!」

「絶対落ちると思ったのに、すげー」

「医大でもバスケやるのかよー!」

「お前には治療してもらいたくねー!!」






「ハイハイ、シンチャンに手術してもらいたい人は、おは朝占いでかに座が1位のときね。

んじゃー次ー!
松林くーん!・・・・」







全員の報告が済んで、最後に和成先輩の番になった。



「じゃあ最後、俺ー、高尾和成は、

○○大学、診療放射線学科に合格しました〜
将来は放射線技師として、みなさんのMRIを撮りますので、病気を疑われた方はまず俺んとこへ来てねー」



「・・・!!
高尾!!なぜおまえが○○大学なのだよ!!」



「あー、近くてレベルが合いそうなところ、そこしかなかったし。
俺だって、また大学でシンチャンの面倒みんの嫌だけどさー、ま、バスケサークルでも入って楽しもうよ。」




「たーーかーーおーーーー!」




あとはもう、みんなわいわいと大騒ぎ、
お昼から始まって、夕方までバスケの話なんかで盛り上がった。
私はたくさんそのときの写真を撮って、あとで先輩たちにメールで送ることにした。









「小羽ちゃん、俺とこいつ、小羽ちゃん入学してきたときから、可愛いねって狙ってたんだよ?知ってた?」


「え・・いえ・・。」



レギュラーだった先輩とその仲良しの先輩の二人。割とよく話す先輩達だった。




「だよねー。
緑間たちのガードが固くてさ、部活の用事以外ではなかなか近寄らせてもらえなかったよなー」

「そうそう、ほかにも結構小羽ちゃん狙いいたよ?
2年にもたくさんいるから、緑間たちが卒業したら、大変かも。」






「あの海常の黄瀬涼太とは別れたんだよね?

よかったらさ、電話番号交換しない?」



「あ・・」


部活では連絡は部長から、選手とマネへと別々にメールが来る。
だから部員一人ひとりとは連絡先は交換していない。
選手全員のLINEはあるみたいだけど、私は入っていなくて、高尾先輩から直接メールを貰っていた。





「ハイストップ―!
うちの事務所の子に、勝手に電話番号聞かないでねー」



「おい高尾、固いこと言うなよー」

「そうだぜ、もう部長権限ないだろー」



そう部員たちがぼやくと、高尾先輩が緑間先輩のほうを見て・・
困った顔をして言った。




「実は、うちのお姫様・・・
いろんな国の王子さまから求愛されてまして・・


例えばー・・海の国のイケメンモデル王子の元カレは未だに未練たっぷりだし、

秋田の国のでっかい王子様は、お菓子の貢ぎ物をもって誘惑中だし、

お兄さんの、透明少年王子は常に目を光らせ・・

うちの緑王子も、常に隙あらば3P狙っているしー、


あぁ、あとは西の国の帝王が・・・」





「あ・・わかったよ、もいいって。」

「なんかどれも、危ない奴ばっかじゃねーか!特に最後のヤツこえーよ!
そんなん手ェだせるかっつの!」






がっくりと肩を落として、やっぱりだめかとぼやいた。

高尾先輩のそういうところは、結構助かっていたからありがたいのだけど、先輩たちが居なくなったら本当に部活も学校でもどうなるのだろうかと、少し心配でもある。





でもきっと先輩たちとのことは、最高の思い出になる。
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