おとしもの

□11.空の色が。
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◆3年後




コンコン




「はあい。」





「入りますよ。」




「あ、お従兄ちゃん。」





グレーのスーツに身を包んだ、従兄のテツヤとその奥さんのさつきさん。

さつきさんのドレス、桃色の大人っぽいデザインですごく似合ってる。




「うわぁ〜・・小羽ちゃん、

すっごく綺麗!!」




「あ、ありがとうございます。」




出窓の傍にあるソファに腰掛けて、できるだけドレスがしわにならないように、座っていた。

真っ白なウエディングドレスの裾には、
すごい上等なレースがあしらわれていて、そこだけ見ていてもうっとりする程だ。







「ねえ、みどりんがね、小羽ちゃんみたら泣くかもしれないよね。」




「え?真太郎先輩ですか? まさか、」




「ほんとうに泣くかもしれないですよ。
あの様子じゃ。」



先に結婚した二人の挙式の時は、私が泣いた。

嬉しくてうれしくて。

ふたりを見ていた青峰先輩も、それは嬉しそうで、式が終わると、わざわざアメリカから帰国して火神さんと一緒にまたアメリカへ飛び立った。

ふたりとも、プロのバスケットプレイヤーだ。






ガチャリとドアが開いた。


皆で振り返ると、そこには緑の人が。

彼は今やお医者さん。きっとすごく優しいお医者様だろうと思う。







「おめでとうなのだよ。
小羽。」



「ありがとうございます。真太郎先輩。

・・ん?

どうしたんですか?その目・・」





なんだか、目が赤い。

花粉の季節でもないし、目をこすったりしたのだろうか。





「あーー!みどりん、泣いてたんでしょう〜」



「えぇっ! そうなんですか?」



「・・そんなワケないのだよ・・!」



「でも、泣いたみたいな目になっていますよ?」



「泣いていないといっているだろう・・!」



「・・先輩、ハンカチの予備ありますよ?」



「・・・もらうのだよ。

その代わりに、今日のラッキーアイテムをやるのだよ。」




掌にのせてくれたのは、銀色のウサギのかざり。



「かわいい〜」


「さすが、みどりんだねー」


「うるさいのだよ。

じゃあ、小羽、あとでなのだよ。」



「はい、ありがとうございます」














コンコン


再びノックの音がしたと思ったら、
返事をする前にドアが開いた。



「小羽っちーー!!」



「あ、黄瀬さん」




「・・っあ、 すげー・・


綺麗っすねー・・」






「ありがとうございます」



クリーム色のスーツで、流石にモデルさん。
すごくカッコイイ。
きっとファンがみたら、大騒ぎだろうなぁ。




「小羽っち。ホントに綺麗っスよ。

ああ〜〜、やっぱ俺のお嫁さんになって欲しいッス!」






「「「え・・・」」」






「ちょっときーちゃん。
それ聴かれたら、まずいと思うよ?」


「そうですよ。
まだわからないんですか?
赤司くんの恐ろしさを・・。



テツヤとさつきさんが、顔色を変えて訴える。あぁ、このキセキメンバーにしかわからないだろう人間模様。私には永遠に踏み込めないなぁ。





「わかってるんスけど、綺麗すぎて。
そこらのモデルなんてメじゃないッスよ?

小羽っち、赤司っちと喧嘩したら、一番に俺のところを頼ってきてほしいッス!」





そういって、テツヤとさつきをあきれさせたところに、その場を凍り付かせる声が響いた。








「心配いらないさ。喧嘩などしないからね。」





「「「(あ、魔王の登場・・)」」」




「あー・・、いやもちろん冗談ッスよ。

ねえ、黒子っち!」






黄瀬さんが、冷や汗を垂らしながら後ずさりした。それからテツヤとさつきもそのまま、また後で・・なんて言って、その場から逃げてしまう有様。


すごい破壊力。





「はあ・・、ほんとに油断できないね。」


「せいくん・・!
タキシードすごく似合ってる・・。」



赤い髪の色に、濃い目のグレーのかっちりした感じが、凄く似合っている。
かっこいい。
すごく、すごく

素敵だ。






「小羽、綺麗になったね。」


「それは、美容師さんのお化粧が上手だから。」


「そうじゃなくて、初めて君を見たときはまだ高校生になったばかりだったからね。
すごく綺麗になった。」




そういうと、私の前まで歩み、そっと手をとった。





「あ・・」



「最後に、もう一度確認しておきたい。」





何のことだろうと、せいくんをじっと見ていると、
その場で手を取ったまま、王子様がそうするように、絨毯に片膝をついて、ソファに座る私を見上げた。





「君の事は、凄く大切で、
ほかの何にも変えることはできないと思っているよ。

どうかこの先、ずっと俺の傍にいて欲しい。


小羽を愛している。

俺と共に過ごしてくれるかい?」








「ひ、ひどいよ・・っ

いま、こんなのって・・・」





「返事は、くれないのかい?」





涙が、零れ落ちないよう必死に頑張ったけど、それはひとつ、ふたつこぼれてしまって。



「ほら、ドレスが濡れてしまうよ。」



せいくんはハンカチを取り出して、化粧が崩れないようにそっと拭いてくれた。





「・・・大好き。


ずっと、ずっと

一緒にいるからっ・・・」




















結婚式は、盛大で、
私の父は意外と泣いたりしなくて、笑っていてくれた。


それからキセキのメンバーたちは、なぜか余興を楽しみ、それぞれひどく目立っていた。










ずっと、見ていてくれてありがとう。

ずっと、探していてくれてありがとう。







あのとき、




あの”おとしもの”を拾ってくれて、



ほんとうに








ありがとう。









〜〜おわり〜〜




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