メイン小説

□5/11
1ページ/2ページ

明日は地田の誕生日だ。

彼の恋人という立場である俺は、プレゼントを用意しなければならない。
それも、お金をかけたちゃんとしたやつ。
地田なら、「土萌から貰えるなら何でも良いよ」だとかほざきそうだが、そうはいかない。
愛情表現が上手くできない俺は、こういうところで挽回すべきだ。

そのため、いつもは行かない、高級そうな雑貨屋に入った。
俺だけ場違いな気がするが、多分大丈夫だろう。


店内をぐるぐると廻り、適当に物色する。
ピアスやらハンカチやら、とにかく色々なものが置いてあった。

地田は、何が好きだろうか。
ピアスもハンカチも、何でも似合いそうな気がする。

思えば、俺は地田の事をあまり知らない。というか、地田が教えてくれない。
誕生日だって、アイツの部屋のカレンダーを見て知った。
地田は俺のことを何でも(多分性感帯も)知っているというのに、少し不公平だ。
「…はぁ」
思わず、ため息がこぼれた。本当にどうしよう。やはり適当に決めるわけにはいかないだろう。

「何かお探しですかー?」
急に後ろから声を掛けられた。振り返ると、にこにこと優しそうに微笑む男性店員が首を傾げている。
「いや、まあ…ちょっと、なやんでて…」
彼ならば何か良いものを探してくれるかもしれない。こういう店の店員だし、センスは良さそうだ。
「誰にさしあげるんですか?」
「え、と…友人、ですかね…誕生日プレゼントを渡そうと思って」
正直微妙なラインだが、本当の事を言うわけにはいかない。伏せるにしろ、恋人だって言うのも恥ずかしい。
店員は、なるほど、と一度呟き、売り場の奥へ行ってしまった。が、すぐに戻ってくる。
その手には、何かが握られている。
「こちらの商品はいかがですかー?」
薄い金属のプレートが何枚か付いているシルバーネックレスだ。プレートには、筆記体で英語が書いてある。読めないが。
「これ、男性の方に人気なんですよー。シンプルなのが良いみたいで」
値札には、予算ギリギリの値段。これくらいシンプルなら、地田も普通に着けられそうだ。
「どうしますかー?他にもありますけど」
「いや、これで。これ、買います」
一度決めたら、悩む前にさっさと買った方が良い。他の物を見たら、一生決まらないような気もする。
俺は、自分が思っているよりも優柔不断なのか。
「お買い上げ、ありがとうございまーす」
さっきよりも優しくはにかんだ店員に、レジに案内された。




帰り道、プレゼントの入った紙袋を見つめる。
この中に、プレゼントが入っている。当たり前のことだが、なんだか新鮮さを感じた。

明日が勝負だ。
渡すときに、ちゃんと言葉を言えるようにしよう。
いつまでも恥ずかしがっている訳にはいかない。

家で、何度か練習するか。










土萌「す、すすす、好きだ!」
母「広樹…あんたなにして」
土萌「 」





end
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ