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それは、争奪戦が始まるほんの少し前のこと。

一人勉強に励んでいる優奈の部屋に、家光は訪れていた。今日は愛する娘の様子を見に来たのではない。もっと重要で重大な用事のために、だ。

「…どうしたの?お父さん」

家光の気配を感じつつも勉強を続行していた優奈だったが、いつもと違い何も話さない父を不思議に思い、手を止めた。顔を見つめて待つも、返事は返ってこない。いつになく深刻な家光のその表情から緊張を感じ取った彼女は、そっとノートを閉じた。家光の方に向き直り待っていると、しばらくしてようやく彼は口を開いた。

「突然だが……おまえに、これを渡しにきた」

家光は懐から金属で出来た小さな箱を取り出すと、机の上でゆっくりと開いた。そこには、何やら欠けたような形をした荘厳な指輪が1つだけ入っている。実物を見たことはなかったが、優奈はそれがハーフボンゴレリングと呼ばれるものであるとすぐに気がついた。

「え?でも、これ……」

優奈は戸惑い、家光を見た。家光は神妙な面持ちでコクリと頷く。

「もっと先に渡すつもりだった物だ。……だが、事情が変わった」

それは、本来ならば数年後、綱吉が10代目に就任する時に守護者となる者たちへ受け継がれるはずの指輪だった。しかし、その指輪を保管する家光と9代目の間で意見の食い違いが生じてしまった。9代目が急に、綱吉ではない人物――彼の息子であるザンザスをボスにすると言い出したのだ。

「もはや俺の手元に置いている場合ではなくなった。奴らが動きだしている。――お前にも、戦ってもらうことになるだろう」

「!」

近いうちに正統な後継者を決めるための戦が始まる。それはすなわち、ボンゴレ内で争うということ。しかも、相手はボンゴレの中でも実力派と名高いヴァリアーだ。多くの血が流れることは必至だろう。それでも優奈は戦わなければならない。――雪の守護者として。

優奈は賢い娘だった。しばらく考え、事態の深刻さを理解すると、それでもなお、力強く頷いた。

「…うん……わかった。その指輪、受けとる」

だが、受け取ろうとリングに伸ばすその手は、家光によって阻まれた。

「お父さん?」

自分の手首を掴む大きな手を、優奈は不思議そうに見つめた。


「…優奈。断っても、いいんだぞ」

「…え?」

思いもよらぬ言葉に優奈は目を丸くする。家光は真っ直ぐ優奈の目を見て続けた。

「……何度も言うが、相手は強敵だ。この戦い…相当厳しいものになる。――俺は、門外顧問としてお前に頼まなければならないが……。……父親としては、あまり頼みたくない……」

家光は辛そうに目を伏せた。優奈はこの場所で多くの任務をこなしてきたとはいえ、まだまだ実戦経験は少ない。争奪戦は守護者同士の一対一の真剣勝負だ。相手は冷酷なプロ……下手をすれば、命までも失いかねない。家光は父親として、そんな過酷なところに、まだ幼さの残る愛娘を送り込みたくはなかった。

「お父さん……」

「優奈、本当に無理はしなくていい。断ってもいい。お前はまだ10歳なんだ」

いっそのこと、断ってほしいと思った。家光の強い想いを優奈も感じているのだろう。彼女の瞳は迷いで揺れた。しかし優奈は1度目をギュッと閉じると、その迷いを振り払うように、家光の不安を取り除くように、笑ってみせた。

「“まだ”10歳じゃないよ。“もう”10歳だよ、お父さん」

「!」

今度目を見開いたのは家光の方だった。

「…大丈夫、うまくやってみせるよ!誰が相手でも、勝ってみせるから」

頼もしく笑う彼女の瞳は、決意に満ちていて。

――ああ、と家光は目を細めた。
生まれたときから大人に囲まれて育ってきた優奈。そのせいか最近、その年齢からは想像出来ないほど大人びた表情を見せるようになった。それが良いことなのか悪いことなのか、家光にはわからない。でも――

「ああ……頼んだぞ」

うん、と優奈は笑って頷いた。今度は、親に頼られて嬉しいという、年相応の屈託のない笑顔だ。

…どうか、無事に済んでくれ――


「…じゃ、わたしオレガノのお手伝いする約束してるから、行くね!」

娘は決意したというのに、未だに覚悟できない己の情けなさ。この状況をどうすることも出来ない無力感。
去っていく愛娘の小さな後ろ姿を、家光はただ見つめることしか出来なかった。


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